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SEI子さんと学ぶ もっと知りたいあの製品技術

今月の注目製品
焼結部品「イグニッションコイル用圧粉コア」
製品データ
焼結部品「イグニッションコイル用圧粉コア」

焼結部品ってなに?

一般的な合金の製造は、複数の金属を溶かし合わせて作られる「溶製金属」であるのに対して、当社グループは、複数の金属を微細な粉末の状態で圧縮成形し焼き固める(=焼結)「粉末冶金法」で製造しています。その中でも主に鉄粉を原料とする機械部品を「焼結部品」といい、自動車のエンジン部品・駆動系部品・電装部品からエアコン部品などに幅広く使用されています。焼結部品は金型を用いて粉末成形するため、大量生産の部品や複雑形状の部品製造に適しており、高い寸法精度が得られます。

イグニッションコイル用圧粉コアとは?

イグニッションコイルは、エンジン内で高電圧を作り出し、スパークプラグで着火させることでエネルギーを生み出す部品です。近年、自動車市場では環境志向の高まりによりエンジンの熱効率向上や低エミッション化が求められ、それらに対応する技術も普及していますが、燃料の着火安定性が低下するという問題から、適用範囲は限られています。その問題を解決するために、イグニッションコイル用のコアには、より多くの電磁エネルギーを蓄積するための磁気飽和耐性(※1)と高電圧を生み出すための高透磁率(※2)が要求されます。

そこで、当社グループが開発した製品が「イグニッションコイル用圧粉コア」です。当製品は、絶縁被覆した鉄粉を原料とした焼結部品で、高い飽和磁束密度を有しながらも磁気飽和しにくいといった特長があります。また、粉末冶金法により、高い形状自由度を持つため、従来の電磁鋼板では製造困難であった円筒の断面形状のコアを開発、体積効率を向上させることで透磁率を高めました。この特長を活かし、高エネルギー出力を可能とする着火安定性に優れた矩形型イグニッションコイル用圧粉コアが完成しました。

※1
磁気飽和耐性:強い磁界をかけても磁束が飽和しにくい特性。
※2
透磁率:材料中の磁束の通りやすさを表す定数。
技術者に聞きました
住友電工焼結合金(株)
伊丹製造部 開発グループ
五十嵐 直人
五十嵐 直人

お客さまからどのような評価をいただいていますか?

今回の製品では、一般的な焼結部品の製造ではほぼ前例のない、成形工程-熱処理工程-外観検査工程-梱包工程を一つに連結した完全自動化ラインを構築することで省人化を図っています。その結果、①高いコスト競争力、②人手起因による品質不具合リスクを排した高い品質管理レベルを実現しています。お客さまには実際に当社の自動化ラインを見学していただきましたが、当社のものづくり力、品質管理レベルについて、お褒めの言葉をいただいております。

また本製品は、粉末冶金業界の発展に貢献したとして、平成27年度 日本粉末冶金工業会賞を受賞しています。

開発・製造する上で難しかったことは何ですか?

イグニッションコイル用に要求される特性を実現するためには、一般的な構造部品用焼結材に比べて約1.5倍(~1000MPa)の圧力で原料粉末を成形する必要がありました。その高い成形圧力に耐えることができる金型構造の検討、金型表面処理技術の開発、そして良品条件の確立に苦労しました。

また本製品の製造にあたり、自動化ラインの設備設計、品質を維持する設備設定値の検討、そして設備が突然停止しないような対策を図るのに苦労しました。


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