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全超電導モータ |
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全超電導モータの構造 |
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超電導ポッド型推進装置 |
地球温暖化の進展と異常気象の問題が取り沙汰される中、京都議定書が2月16日に発効しました。日本は温室効果ガスを2008年から2012年に基準年比(1990年)で6%削減する必要があります。(実際には、2008~2012年度平均で14%の削減が必要と言われています。)既に自動車に対する排気ガスの規制等が始まっており、今後、船舶についても同様な排出ガス規制が行われる予定です。産学グループでは、この規制へ有効的に対応できる動力装置として、全超電導モータを開発しました。
超電導は、電気抵抗をゼロにすることができるため、エネルギーを無駄なく使用することが可能になり、その結果空気中に無駄な熱を放出することがなくなり、自然環境への悪影響が少なくなります。また、超電導は従来よりも200倍以上の電気を流すことができるので、装置の小型・軽量化が可能になり経済性も向上します。
船舶に全超電導モータと同時に開発した超電導ポッド推進装置を使用した場合、出入港の多い船では年間約11%のCO2削減ができることが試算されています。
また、全超電導モータは、陸上装置で使用されているモータに比べて効率が約10%高いので、省エネ効果が大きい事がわかっています。
このように、省エネ・地球温暖化防止に効果がある超電導モータが、今後多くの船舶や陸上で採用され温室効果ガス削減や省エネに寄与することが期待されます。
今回完成したモータは、このすばらしい効果が期待できる超電導技術を、モータの界磁コイルと電機子コイルの両方に適用した世界初の画期的な全超電導モータなのでモータでの無駄なエネルギーの消費はほとんどなくなると同時に画期的な小型・軽量化が達成されています。
超電導モータの開発をする場合、全世界的に共通な3つの大きな課題があり、産学グループもその課題に直面しました。しかし、発想の転換からその課題を解決した産学グループは、世界初の画期的な全超電導モータを完成させました。
課題1 |
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従来から超電導の冷却冷媒として使用されていたヘリウムやネオンガスを使用すると冷媒の熱を遮断するための構造が複雑・大型で、モータの小型・軽量化が実現できない。
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<解決策> |
冷媒にヘリウムやネオンガスより温度が高い液体窒素を使用してもモータが稼動する仕組みを考案した結果、熱を遮断する構造を簡素化することが可能になり圧倒的な小型・軽量化を実現しました。
・5000kWモータの場合、従来のモータの1/10の大きさ(世界最小を達成)
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課題2 |
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超電導は、磁気に弱いので磁気から超電導を守る仕掛けを考案しなければ、超電導モータが実現できない。
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<解決策> |
FLC(フラックスコレクタ:商標登録出願中)を開発して実現しました。FLCは、コイルの中心に高透磁材料を配置して、磁束を集中通過させることでコイルに磁気の影響がないようにする仕掛けです。
・全超電導モータの完成(世界初)
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課題3 |
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従来の超電導モータのように、超電導部分をモータとして回転させると冷媒を軸経由で流入する機構が必要になり、モータの信頼性・メンテナンス性が低下するので、超電導部分は回転しないモータを実現したい。
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<解決策> |
超電導部分を全て固定して回転する部分を誘導子として追加しました。誘導子にはコイルがないのでエネルギーロスは生じません。
・高信頼性、ノーメンテナンスを現実化(超電導部分の固定化は世界初)
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世界で解決できない課題を解決した結果、上記の他に、次の特徴(*B)を持つモータが誕生しました。
1. |
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超静音型モータ(モータから音が出ません):モータが回転している事に気がつかないほど静かです。将来、宅急便等のトラックに搭載すると車の騒音から開放され、排気ガス公害の心配もなくなる夢のモータです。 |
2. |
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モータの中には、非常に強い電磁石が入っていますが、その磁石からの影響(漏れ磁束)が外部にありません。:心臓ペースメーカを使用している人へもやさしいモータです(未検証)。 |
3. |
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モータ内部は極低温ですが、モータ表面は常温です。:水中で使用しても、凍る心配はありません。小型・大容量との特徴と合わせて、大型船舶を車のような高速で走らせることも夢ではありません。 |
4. |
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モータ軸の2重構造化が可能です。:この特徴を利用して、モータを2台つなげて、2台の回転方向を逆にすることもできるようになります。来年には、世界で初めての超電導2重反転プロペラが誕生する予定です。2重反転プロペラで、更なるエネルギーの節約(約10%)が可能になり、世界中の船舶がこの2重反転プロペラを使用すると、地球温暖化防止に貢献することができます。 |
このような特長から、船舶用電気推進装置用モータ、鉄道用モータ、その他にもいろいろな用途(*C)が期待されます
産学グループでは、出力400kW(500トンクラスの船舶用)、回転数毎分220 回転全超電導モータの製品化の見とおしを既に持っており、H17年8月販売開始を目標に製品検証試験に入る予定です。
同時に全超電導2重軸モータを使用した、超電導2重反転型ポッド推進装置の開発にも着手しました。販売は、来年度を予定しています。
さらに、産学グループでは、5000kW(1万トンクラスの船舶用)以上の大容量全超電導モータの検証を行うための試験機の開発を行う計画です。
(*A)
<産学グループ(五十音順)> |
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石川島播磨重工業(株)、住友電気工業(株)、大陽日酸(株)、ナカシマプロペラ(株)、新潟原動機(株)、 (株)日立製作所、国立大学法人福井大学 杉本英彦教授、富士電機システムズ(株) |
(*B)
<全超電導同期モータの特長> |
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1. |
モータの界磁コイル、電機子コイル両方を超電導化(世界初)。 |
2. |
全てのコイルが超電導化されているのでモータからの発熱がなくなるため、従来船内に必要だったモータの冷却装置が不要となり船内スペースの有効利用が可能。 |
3. |
全ての超電導コイルが固定されているので、従来の超電導モータで必要だった軸部からの冷媒導入や電源供給がなくなり、冷媒用回転ジョイントやスリップリングが不要となるため、モータの信頼性とメンテナンス性が向上。 |
4. |
モータ軸の両端が使用できるので、モータのタンデム接続化やモータの2重反転軸化が可能となりモータの多容量化や2重反転プロペラへも対応可能 |
5. |
従来困難とされていた「安価・取り扱い容易な液体窒素による冷却」で使用可能。 |
6. |
従来のモータよりも小型・軽量化(容積は1/10、重量は1/5)(5000kWモータの場合)。 |
7. |
キロメータ単位で製造可能な量産化された超電導線材(電線)を使用。 |
8. |
モータのうなり音、モータからの漏れ磁束が、ほとんどない。 |
9. |
モータ内部は極低温でも、モータ表面は常温なので、使用場所(水中も)を選ばない。 |
10. |
モータの容量がタンデム方式、ユニット方式で変更できるので、色々な容量への対応が容易。 |
(*C)
<本モータの主な用途> |
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1. |
船舶用電気推進装置用モータ(特に、ポッド型推進装置) |
2. |
鉄道用モータ |
3. |
風力発電装置用発電機(同期モータは、外部動力で軸を回転させると発電機としても利用可能) |
4. |
トラック車両用モータ |
5. |
その他の大容量用途モータ(鉄鋼圧延装置、ブロア装置等) |
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