今回開発したワイヤレス給電モジュールには、電磁誘導方式を採用しています。電磁誘導方式とは、非接触電力伝送の方式の一つで、送電側から供給された電力エネルギーが空間を介し、受電側に磁束を発生させ、電力を流すことができる方式です。
ワイヤレス給電モジュールは、制御基板とアンテナで構成されています。従来、アンテナには巻線コイルが使われており、柔軟性がなく、小型化する機器内部での設計に制限がありました。そこで、当社独自の立体配線技術の導入により、業界で初めて、巻線コイルをフレキシブルプリント基板(以下、FPC)に置き換えた給電モジュールを開発しました。これにより、柔軟性が向上、さらに小型化・薄型化を実現しています。また今回開発した製品により、電子機器の高性能な設計やデザインが可能になったほか、防水やコードレス化など機能性の向上にも貢献します。
本製品の使用分野は、防水防塵対応が求められるウェアラブル端末、コードレス化へのニーズが高いヘルスケア機器、産業機器など、ますます小型、軽量化が求められる分野を想定しています。今後、2014年10月の製品化に向け、電力の伝送効率の向上や製品ラインナップの拡充を進めるとともに、磁界共鳴方式*1の開発にも取り組んでまいります。
【今回開発した製品の特長について】
- 1.アンテナの超小型・薄型化を実現
- アンテナ部に、巻線コイルに代わってFPCを採用することで、受信・送信アンテナの面積が従来の規格品より84%小型化(10mm×30mm)、厚さが75%薄型化(0.25mm)し、業界初の超小型・薄型化を実現しています。また、特に受信モジュールは、FPCで構成することで、従来の巻線コイルと制御基板の組合せを一体化でき、省スペースニーズに対応しています。
- 2.フレキシブルな搭載にも対応
- 送信・受信アンテナ双方にFPCを用いているため、FPCの特長である屈曲性、柔軟性を活かし、様々な筐体への配置設計が可能です。巻線コイルを使った給電モジュールでは、不可能だったU字部や屈曲部への搭載も可能です。
- 3.給電制御機能の追加
- 電磁誘導方式では、位置ずれや異物進入が起こった際、伝送効率が低下し発熱する可能性があります。当社品はこの対策として、温度モニターによる給電制御機能を有しており、温度上昇時には送電を停止します。
- 4.送受信組み合わせたモジュールとして提供可能
- 当社は、送受信モジュールの設計から製造まで対応しております。小型化には、特に送受信のバランスを考慮した設計が必要となっており、送受対向で最適化されたモジュールを提供します。
【参考仕様】
|
項目 |
仕様 |
送信側 |
入力電圧 |
DC 5V |
入力電流 |
Max.400mA (下記寸法での参考値) |
寸法 |
アンテナ |
30.0(W)×10(H)×0.25(T)mm (突起部は含みません) |
制御部 |
50(W)×32(H)×0.25(T)mm (突起部は含みません) |
受信側 |
出力電圧 |
DC 5V |
出力電流 |
Max.170mA (下記寸法での参考値) |
寸法 |
アンテナ |
30(W)×10(H)×0.25(T)mm (突起部は含みません) |
制御部 |
12.5(W)×10(H)×0.25(T)mm (突起部は含みません) |
*1 磁界共鳴方式:給電側のコイルに電流が流れることにより発生した磁場の振動が、同じ周波数で共振する受電側の共振回路に伝わる現象を用いた方式です。電磁誘導方式に比べ、離れた距離でも送電できる方式として注目を集めています。
*2 R:屈曲半径のこと(単位:mm)
R3.0 (屈曲半径3mm)の値は、一例であり、数値を保証するものではございません。
以上