照射架橋装置の照射口

電子線の工業利用という人類の英知 〜国内初の照射架橋技術の確立〜

1952年、英国の物理学者・チャールスビー教授が、電子線によるポリエチレンの「架橋」という、極めて特異な現象を発見した。この発見がその後広く工業分野で利用されることになる、照射架橋の幕開けだった。「架橋」とは、高エネルギーの電子線をポリエチレンなどの樹脂に照射することで分子間に新たな結合ができる化学反応であり、それによって耐熱性、耐油・耐薬品性、形状記憶などの特性を得ることができる。それは現在、プラスチックやゴムなどの高分子材料の特性を改良する非常に重要な工程とされ、照射架橋によって生み出される製品は、家電、自動車をはじめとした幅広い分野に適用されている。

住友電工グループは、この照射架橋技術にいち早く着目し、1950年代から研究を開始。1957年に日新電機株式会社(以下、日新電機)と共同で「NS型電子線加速器」の開発に着手し、1960年には研究用電子線加速器1 号機を設置。同年には照射架橋した電力ケーブルを電力会社に納入した。以後、文字通り照射架橋技術のパイオニアとして多彩な製品を生み出し、日本のモノづくりを支えてきた。そして今、照射架橋技術は時代のニーズ、社会的要請の変化の中、新たな進化を開始している。今回は、住友電工グループの照射架橋事業の軌跡を追いつつ、現在、そして未来を照らす照射架橋技術を紹介する。

電力ケーブル

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照射架橋技術、実用化への道
〜国内基盤産業を支えてきた照射架橋〜

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