2012年1月30日
住友電気工業株式会社
住友電工ファインポリマー株式会社

　当社は、樹脂中最高レベルの耐磨耗性と滑り性を両立した「高機能フッ素コート」を開発し、このほどサンプルの供給体制を整えました。

　「高機能フッ素コート」は、ポリテトラフルオロエチレン（以下PTFE(※1)）というフッ素樹脂を用いています。PTFEは、滑り性（固体中最小の低摩擦性）、非粘着性などユニークな特性に加え、耐熱性・耐薬品性・耐候性等にも優れており、当社グループは、炊飯器内釜・フライパン用フッ素コート「スミフロンコートアルミ」、複写機・プリンター用定着・加圧ローラ「スミフロンローラ」、水処理やエアフィルタ用フッ素系多孔質膜「ポアフロン」等、幅広い製品を提供しています。
　一方PTFEは、フッ素原子間の結合力が弱いことから、磨耗しやすいため、滑り性を活かした摺動用途での利用は限定的でした。

　当社と住友電工ファインポリマー(株)は、長年培ってきた「フッ素加工技術」と「電子線照射技術(※2)」を融合し、耐磨耗性を飛躍的に高めた「高機能フッ素コート」の開発に成功しました。
　具体的には、アルミニウム等の基材上にPTFEをコーティングした後、特殊な技術で直接電子線を照射し、コーティング全体を架橋(※3)することで分子間の結合を強化しました。
　これにより、耐磨耗性の大幅な向上とともに、基材との密着性の向上を実現しました。また、優れた滑り性などのPTFE本来の特性をそのまま維持しています。

　当社によるスラスト摩耗試験(※4)では、スミフロンコートアルミ、摺動材として最も一般的なPOM(※5)、スーパーエンジニアリングプラスチックであるPEEK(※6)と比べ、「高機能フッ素コート」は格段に高い耐磨耗性（PEEK比10倍以上）を有します。

PTFE（ポリテトラフルオロエチレン）：

フッ素原子（F）と炭素原子（C）の2原子からなる直鎖状高分子。C-F間の結合力は極めて強く安定しているため、耐熱性、耐薬品性、耐候性等の特性に優れます。一方、高分子中最小の電気陰性度・極性を持つため、異分子が付着しにくく、フッ素原子間の凝集力も非常に弱いという特徴を持ちます。

電子線照射技術：
当社は、1964年に国内初の商用電子線加速装置を導入し、電子線照射による架橋樹脂製品として、熱収縮チューブ「スミチューブ」や耐熱チューブ「イラックスチューブ」、改質エンプラ「テラリンク」を製造販売しています。

架橋：

分子鎖間の「橋かけ」を行う反応。結合力の非常に強い共有結合を形成できるため、耐熱性、耐薬品性、耐磨耗性等様々な特性を向上できます。今回の新技術はPFA・FEP等のPTFE以外のフッ素樹脂も対応が可能です。

スラスト磨耗試験：

板状サンプルに、スラスト（垂直）方向の加重を負荷する試験方法。今回の試験では、1800rpmで10分間、サンプルを回転させながら、S45C製のリング状の相手材に加重しその時の磨耗量を調べました。（右図）

POM（ポリアセタール）：

耐磨耗性・滑り性に優れた汎用摺動樹脂。

PEEK（ポリエーテルエーテルケトン）：

市販されている摺動用樹脂の中、最も高性能な材料の一つ。

巻き軸受け：

コーティングしたアルミニウム等の金属板を円筒状に巻いた軸受け。巻き軸受けでは割りが生じますが、割りのないプレス軸受けも開発中です。

■ 補足資料 [ : 598KB ]

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