本実証運転は、データセンター等の屋内配電線など直流を含む低電圧・大電流配電システムへの高温超電導ケーブル配電システムの適用を視野にいれて、実施するものです。スペースが限られた環境下でも、フレキシブルに導入できるよう、高温超電導ケーブルをはじめとする機器の小型化を図るとともに、高温超電導ケーブルを分岐する超電導分岐箱を新たに開発しました。
今回の実証運転では、これら機器およびシステム全体の信頼性を実証するとともに、線路途中に設けた18mの垂直立上げ部に関して、布設工法、高落差条件下での冷却の安定性の実証などを行います。
1. 高温超電導配電システムの概要
本システムは、2本の高温超電導ケーブル(各35m)、超電導分岐箱、既設の電力ケーブルと接続するための終端接続部、これらを冷却する液体窒素循環型冷却システム、監視システムから構成されています。
2. 本システムを構成する機器等の概要
- (1) 高温超電導ケーブル(交流3.3kV、線路定格電流210A、1.2MVA)
- ケーブル構造は、コンパクトな3心一括型(ケーブル外径:約100mm)とし、当社製ビスマス系高温超電導線「DI-BSCCO Type ACT-CA」を約6km使用しています。
高温超電導線は直流での使用については送電損失がゼロになりますが、交流では僅かに損失が発生します。現在、当社は用途に応じた6種類の「DI-BSCCO」を製造・販売していますが、「Type ACT-CA」は、線をスリム・コンパクト化(幅:2.8mm、厚さ:0.31mm)することで交流損失の低減を図った交流機器用途の高温超電導線です。
- (2) 超電導分岐箱、終端接続部
- 終端接続部は、超電導ケーブルへの入口と出口で、通常の電力(常電導)系統との接続を行います。常温と約-200℃の間で電流を受け渡すために、熱侵入を抑えつつ、電気抵抗を小さくする構造をとっています。
今までの超電導ケーブルプロジェクトでは、2点間の送電でしたが、データセンター等では、送電途中で電力を取り出したり、分岐したりする必要があります。それを実現するのが分岐箱で、-200℃の状態で電力を送り続ける一方、複数の方向にケーブルを分岐したりします。今回は分岐はしていませんが、給電方向の転換に用いています。
- (3) 冷却システム
- 出力2kWの冷凍機で過冷却した(約-200℃)液体窒素を終端接続部から導入し、ケーブル内を循環させることで、システム全体を超電導状態に維持します。複数台の冷凍機を用い、順番に停止、メンテナンスを行うことによって長期運転を実現します。
- (4) 制御監視システム
- 本システムの運転状態を常時監視するとともに、運転データの収集、蓄積を行います。本システムに異常が発生した場合には、直ちに別の電力系統への切り替えができます。
3. 今後について
長期運転(無期限)を通して得られた運転データを分析して、最適な保守のあり方を検討するとともに、当社グループ会社であり、ケーブルの水冷・風冷システムで経験豊富な住友電設株式会社と協力して非常時にも迅速に対応できる保守体制の整備、確立を進めます。こうしたことにより、低損失な送配電を実現する技術として期待される高温超電導ケーブルを、長期間にわたり安心して使用頂ける製品・サービスへと高めていきます。
以上
・「DI-BSCCO」は住友電気工業株式会社の商標または登録商標です。