【溶融塩電解液電池について】
溶融塩電解液電池は、電解液に溶融塩(イオン液体とも呼ばれる)のみを使用した二次電池であり、資源量が豊富であり比較的高いエネルギー密度が期待できるナトリウム酸化物を正極活物質に、難燃性である溶融塩を電解液に用いています。
当社は、2011年に、国立大学法人京都大学(エネルギー科学研究科 萩原研究室)と共同で、57℃という低融点の溶融塩(NaFSAとKFSA*1の混合物)を開発し、高エネルギー密度で、他の二次電池と比べて動作温度領域が57℃~190℃と広い溶融塩電解液電池の開発に成功しました。
以来、2015年の製品化に向けて、信頼性・安全性の評価、生産技術の開発を進めるとともに、京都大学と共同で、より低温で動作可能な溶融塩の探索や電池の改良に取り組んできました。
【今回の開発成果について】
今回開発した溶融塩電解液電池では、融点がより低温でありながら電解液に適した溶融塩(NaFSAとC1C3pyrFSAの化合物)を採用した結果、20℃から90℃という室温を含む広い温度領域で動作が可能となりました。また、充放電を繰り返した際の劣化が非常に小さく、他の電池と比べて優れたサイクル寿命を発揮することができます。
【今回開発した溶融塩電解液電池の特長】
- 1.広い動作温度領域
- 動作温度領域が20℃~90℃と一般的なリチウムイオン電池や鉛電池と比べて高温域で広いため、排熱のためのスペースが不要で組電池とした場合の小型化が可能です。また従来、電池を高温環境で使用する場合には電池を空調等で冷却することが一般的でしたが、開発した電池は冷却の必要がなく、電池システムとしてのエネルギー効率が優れると期待されます。さらに、溶融塩を含む電池材料が難燃性を有するため、火災や機器異常の際の安全性に優れています。
- 2.優れたサイクル寿命
- 採用した溶融塩が化学的に非常に安定であり、電池の動作電圧の範囲で分解反応が起こらないため、満充電、完全放電を繰り返すような過酷な条件下で使用した場合でも、優れたサイクル寿命特性を示します。
- 3.優れたフロート充電特性
- バックアップ電源用の二次電池は、満充電付近の一定電圧が加えられ続けるフロート充電の状態で使用されますが、長時間使用すると電池容量が低下することが知られています。今回開発した溶融塩電解液電池は、一般的なリチウムイオン電池と比べて、フロート充電における使用時においても優れた寿命特性を示します。また充電状態で保管した場合、一般的な電池では自己放電により容量が徐々に低下しますが、開発した電池は自己放電をほとんど示さず、優れた保存特性を示します。
以上
【補足資料】
<主な二次電池との比較>
*1 NaFSA:ナトリウムビス(フルオロスルフォニル)アミド
KFSA:カリウムビス(フルオロスルフォニル)アミド