ステンレス鋼は使用用途の広い材料であるとともに、耐食性が高く、溶剤塗装が不要であることから環境負荷も低く、かつリサイクル性に優れるため、その需要は年々着実に伸びています。しかしながら、ステンレス鋼を切削加工する際の問題として、加工面が硬化しやすいため工具の刃先が欠けやすい、また熱伝導性が低いため切削熱が逃げにくく、工具刃先が高温となり、塑性変形が起きやすいといった点があります。さらに切削工具材質との親和性が高いため、刃先に凝着しやすいなどの性質から、ステンレス鋼は難削材の一つとされ、高能率・安定加工が困難であることが課題となっていました。
このほど当社は、こうした課題を解決するため、ステンレス鋼旋削用新材種「AC6030M/AC6040M」と粗切削用ブレーカ「EM型」を開発しました。
1.特長
- (1)「AC6030M(CVD材種)」
- 新開発のホウ化物系チタン化合物被膜を最表層に被覆することで、コーティング膜の大幅な強度向上と優れた表面平滑性が得られ、加工の安定性を実現しました。AC6030Mは、進化したCVD*1独自技術によって開発されたコーティング “アブソテック プラチナ(Absotech Platinum)”を採用し、従来コーティング膜対比2倍以上の耐チッピング性を実現するとともに、耐溶着性を大幅に向上させたステンレス鋼の一般旋削加工第一推奨材種です。
- (2)「AC6040M(PVD材種)」
- 当社独自開発の超多層薄膜構造を継承するとともに、耐熱性に優れた新組成TiAlSiN系超多層膜を採用いたしました。さらに新開発の超硬基材とコーティング膜との界面制御技術を適用することで 、コーティング膜の耐剥離性を大幅に向上させることに成功しました。AC6040Mは、進化したPVD*2独自技術によって開発されたコーティング “アブソテック ブロンズ(Absotech Bronze)”を採用し、ステンレス材のバルブ、フランジや継手などの配管部品加工などにおいて、従来比2倍以上の耐欠損性を実現させたステンレス鋼の断続加工第一推奨材種です。
- (3)粗切削用「EM型ブレーカ」
- 従来のステンレス鋼中切削用EG型、仕上げ用EF型に加え、新たに粗切削用EM型を開発し、ステンレス鋼加工専用ブレーカとしてシリーズ化させました。新開発の粗切削用ブレーカEM型は、切れ味を維持させつつ優れた刃先強度を有しています。粗加工時での切りくずをスムーズに排出させることで、切りくずによる切れ刃外欠損を抑制し、より安定したステンレス鋼の加工を実現しました。
2.ラインアップ
AC6030M |
217アイテム |
AC6040M |
132アイテム |
EM型ブレーカ |
44アイテム |
3.販売計画
初年度: 5億円
3 年後:25億円/年
4.価格
当社従来品と同設定。
AC6030M(標準品) |
CNMG120408N-EM 770円(税込832円) |
AC6040M(標準品) |
CNMG120408N-EM 770円(税込832円) |
*1 CVD (Chemical Vapor Deposition):
ガス反応を利用して、物質の薄膜を形成する蒸着法のひとつで、反応容器で加熱した基板物質上に、目的とする薄膜の成分を含む原料ガスを供給し、気相または基板表面での化学反応により膜を形成させる方法。
*2 PVD (Physical Vapor Deposition):
物質の表面に薄膜を形成する蒸着法のひとつで、気相中で物質の表面に物理的手法により目的とする物質の薄膜を堆積する方法。
- アブソテック、Absotech は、住友電気工業株式会社の商標です。
以上