近年、省エネルギーに対する社会的要請とともに、工場や企業などの大規模需要家において、再生可能エネルギーなどを使用した分散型の電力システムの活用がますます高まっています。こうした大規模電力システムにおいては、より効率的なエネルギー運用が求められており、エネルギー・マネジメント・システムが重要な役割を果たします。
当社が新たに開発したsEMSA(*1)は、環境負荷軽減やコスト最小化のためのエネルギーの高効率運用が可能なシステムとなり(図1)、その特長は下記の通りです。
- 1.幅広い顧客ニーズに対応可能な、新しい独自方式を開発
- 当社はエネルギーマネジメントにおける役割を階層化し、図2に示す方式(アーキテクチャ)を開発しました。層内における各機能をモジュール(*2)化しており、sEMSAは必要なモジュールを組み合わせて構成することが可能です。このため柔軟性・拡張性に富んだ開発環境が実現可能で、系統から家庭まで多様な顧客ニーズや分散電源に対して短納期・低コストに対応することができます。
- 2.デマンドレスポンス(DR)にも瞬時に対応
- 複数の分散電源を最適に運用する手法として数理計画法(*3)が一般に知られています。この数理計画法において、当社は電力を最適に運用する計画を短周期で立案し、フィードバック制御を行う高速計算アルゴリズムを新規に開発、従来より、電力コストの予測誤差を少なくでき、かつリアルタイムレベルでの運用を実現しました。電力会社の予備電力確保や負荷平準の手段として、DRへの関心が高まる中、sEMSAはDR発令を受けて瞬時に対応することも可能です。
- 3.電力消費の最適運用と契約電力の低減および遵守を両立
- sEMSAは、短周期で再計算する電力最適運用計画を参照しながら、電力会社から受電する電力を調整するフィードバック制御をかけますので、電力最適運用と契約電力の遵守を理想的に両立させます。
- 4.投資回収条件等の各種シミュレーション機能
- 分散電源導入前の事業所にあっては、投資回収最良条件での分散電源設備仕様をご提案し、同設備導入後にはその条件にそった電力運用をsEMSAが実現します。
現在、sEMSAは、当社横浜製作所にてレドックスフロー電池3台(計1MW)、ガス発電機6台(計3.6MW)、集光型太陽光発電(計100kW)および製作所内実負荷を使って実証運転中です。DRについては経産省国プロ:「次世代エネルギー・社会システム実証事業」の下で、横浜市と連携して試験を進めております。
今後、当社は大規模事業所や工場向けに、下記用途を目的にsEMSAの商用化、販売を計画しています。
- 環境負荷軽減やエネルギーコスト最小化のためのエネルギーの高効率運用
- 電力会社/アグリゲータ(*4)によるデマンドレスポンス対応
- 複数の事業所・工場間の30分同時同量の電力託送(*5)他
図1:sEMSAによるエネルギー運用
図2:開発アーキテクチャ(*6)
図3:sEMSAにおける操作画面
*1 sEMSA:
図2のアーキテクチャに基づく、住友電工エネルギー・マネジメント・システムの総称です。
*2 モジュール:
システムの全体機能を複数の機能に分割して開発するための個々の単位を指します。入出力のインタフェースをあらかじめ定めておくことで、モジュールの交換により機能の変更や拡張が可能です。
*3 数理計画法:
与えられた制限の下で、ある量を最大あるいは最小にするような条件を求める数学的手法です。
*4 アグリゲータ:
電力会社からの要請を受けて複数需要家との間で負荷調整サービスを実施する事業者を指します。負荷調整に応じた需要家にはインセンティブ報酬を支払います。
*5 電力託送:
電力会社が所有する送配電網を、発電事業者や他の電力小売り事業者が利用することを指します。送配電網の利用にあたっては送電側と受電側それぞれで、30分の同時同量原則が求められます。
*6 図2の略語は以下の通りです。
BCP:Business Continuity Plan(事業継続計画)
RF:Redox Flow電池
NaS:ナトリウム・硫黄電池
GE:ガスエンジンタイプ発電機
- sEMSAは、住友電気工業株式会社の登録商標です。