当社の高温超電導ケーブルを電力系統に連系する、日本で初めての実証運転が10月29日に東京電力(株)の旭変電所(横浜市)にて開始しました。
この実証運転は、NEDO(※1)が平成19年度から7年間の計画で実施している共同研究事業「高温超電導ケーブル実証プロジェクト」の一環として行うもので、東京電力(株)の旭変電所内に設置した全長約240メートルの高温超電導ケーブルを電力系統に連系し、高温超電導ケーブルの実系統での運用性や信頼性、安定性を検証するプロジェクトです。
この実証運転では、三心一括型(※2)の超電導ケーブルとしては世界最大容量(20万kVA級)となる高温超電導ケーブルを活用し、また線材には、当社が平成16年に開発したビスマス系高温超電導線「DI-BSCCO」を改良(※3)したものが採用されました。
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※1NEDO:
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
※2三心一括型:
3本の高温超電導ケーブルコアを一つの断熱管の中におさめた構造。
※3ビスマス系高温超電導線「DI-BSCCO」を改良: 当社が、NEDOプロジェクトの成果をもとに平成16年に開発したビスマス系高温超電導線「DI-BSCCO」(Dynamically Innovative-BSCCO)をさらに改良し、線材をスリム・コンパクト化することで、交流損失の低減化を図っています。「BSCCO」はBi2Sr2Ca2Cu3O10と記述される酸化物超電導体の頭文字をとって表記されるものです。ビスマス(Bi)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)、銅(Cu)、酸素(O)の化合物。
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■概要
このプロジェクトでは、超電導ケーブルを社会の重要なインフラである電力供給システムに適用するために、これまでのNEDOの技術開発によって得られた超電導ケーブルの開発成果などを踏まえ、冷却技術などを統合する超電導ケーブルシステムを構築しています。また、超電導ケーブル単体だけではなく、線路建設、運転、保守を含めたトータルシステムの信頼性を実証するために、実系統に連系した実証試験を実施することによって超電導ケーブルのトータルシステムとしての総合的な信頼性を実証するとともに、革新的な高効率送電技術の開発・検証を行うことを目的としています。
本プロジェクトの実施により、安定的かつ高効率な電力供給のための技術開発を行い、超電導ケーブルの初期市場形成と新規産業の創出に貢献することを目指しています。
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■今回の成果
本プロジェクトでは、当社の低交流損失型のビスマス線材を用いて、短尺ケーブルによる交流損失の検証、電力系統事故時における健全性の検証等と、これをもとにした30m級の三心一括型超電導ケーブルの設計・製造と大電流接続部である終端接続部、中間接続部の技術開発を行い、これらの各性能評価を行ってきました。
また、実証場所である東京電力(株)旭変電所にて超電導ケーブルシステムと運転・監視システムの設計・構築、超電導ケーブルシステムと既存系統との接続・切離しを行う保護・遮断システムの構築を東京電力(株)とともに実施しました。また、(株)前川製作所が冷却システムの設計と構築、さらに送電を維持した状態でのメンテナンスの手法の検討を行い、実証試験のための超電導ケーブルシステムの設計に反映させてきました。
これらを達成した後、66kV、200MVA級の三心一括型超電導ケーブルの製造、中間接続部、終端接続部の設計・製造、それらを冷却する液体窒素循環型の冷却システムを製造し、旭変電所に実証用ケーブルシステムを構築しました。
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超電導を総復習
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超電導とは?
一般に特定の物質が超低温に冷やされた際に、電気抵抗がゼロになる現象のことを言います。電気抵抗がゼロであるため、エネルギー損失が小さく、かつ電流密度が高いという特長も持っており、省エネルギー技術として期待されています。
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当社の超電導技術開発
1960年代初頭、低温超電導体の研究から当社の超電導技術開発はスタートしました。そして1986年、高温超電導体が発見された直後からその研究を開始し、現在ではビスマス系超電導体(臨界温度マイナス163度/110K)と希土類系超電導体(臨界温度マイナス183度/90K)の2種類を実用化の有力候補と考え、研究開発を続けています。
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■ビスマス系超電導線材「DI-BSCCO」の特長
2004年、当社は新しい超電導線材加工法を採用したことで、ビスマス系超電導線「DI-BSCCO」の量産化に成功しました。2004年以降は、顧客ニーズに対応した複数種類の「DI-BSCCO」を量産、販売をしています。
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高温超電導体のため、安価な液体窒素(約50円/リットル)を冷媒として使用することができます。(これまで主流であった低温超電導体は冷媒として液体ヘリウム(約1,500円/リットル)が使用されてきました。)
同断面積あたり、銅線の約200倍の電流を流すことができます。
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■ビスマス系超電導線材「DI-BSCCO」を使った超電導ケーブルの特長
発電所で作られた電気は、電線を通って工場や家庭へと届けられますが、その間に約5%もの電気が失われています。これは主に抵抗によるものです。しかし、超電導線を用いた超電導ケーブルは抵抗がゼロ。超電導ケーブルを活用すれば電気をより効率的に運ぶことができ、環境にやさしい製品と言えます。
超電導線は同断面積の銅線に比べ、約200倍の電流を流すことができますので、ケーブルのコンパクト化が可能です。布設する際のスペースも小さく、大がかりな工事が不要となるため、工事コストの削減にもつながり経済的です。
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・「DI-BSCCO」は、住友電気工業(株)の登録商標です。
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