住友電工グループには、現在の5つの事業領域を支える様々な材料技術・情報通信技術(コア技術)があります。こうしたコア技術を活用し、新規事業の早期創出に取り組んでいます。
今月号では、ライフサイエンスの分野から、化合物半導体および光通信技術を駆使して開発した近赤外組成イメージングシステムCompovisionを紹介します。
|
|
原理
Compovisionは、波長1.000~2.350nmの近赤外光を受光可能な二次元受光素子と分光器からなるカメラと、ハイパースペクトル分析・イメージングソフトからなる組成イメージングシステムです。
測定対象に近赤外光を当て、非破壊・非接触でその物質の組成や濃度分布等の状態をリアルタイムで計測することができます。
可視画像の代わりに、各画素がスペクトルデータを持った「ハイパースペクトル」を出力するため、スペクトル解析により画素単位での物質の同定、濃度分析が可能となります。通常、赤外光は人間の目では見ることができませんが、任意の波長にRGBを割り当てることで、組成イメージングを可能としております。 |
|
組成の違いや組成の濃度分布を分析する手法として一般的なFT-IR(※1)などの赤外分光法は、非破壊での測定が難しいという課題があります。Compovisionは、生体や有機物に浸透しやすい近赤外光を利用しており、非破壊・非侵襲(前処理不要)での測定が可能です。
|
|
|
※1赤外分光法(FT-IR):
赤外光を照射し、透過光あるいは反射光を分光することでスペクトルを得て対象物の特性を知る方法。水の吸光率が高く、水分を含んだ試料の測定が難しい(他の吸収スペクトルが隠れてしまう)。また、水分以外でも吸光度が高すぎる成分を含む場合が多く、適切な結果を得るために測定サンプルに加工を施す必要(スライスする、液体であれば希釈するなど)があり、非破壊での測定が困難。さらに、特殊な検出器を必要とし、通常は一点計測となるため、画像化する場合はスキャンが必要(リアルタイムでの測定が困難)。 |
|
|
独自の高速スペクトル判定アルゴリズムを開発したことにより、近赤外カメラで収集した全ての画素のデータにおいて、リアルタイムで吸収スペクトルによる組成判定を行い、組成の違いや組成の濃度分布を画像化することが可能です。
|
|
|
|
量子井戸構造(※2)からなる近赤外カメラ用センサ材料を新たに自社開発し、1.000~2.350nmの幅広い波長領域での測定を実現しました。従来のシステムより波長帯域が広く、水・脂肪・タンパク質などの詳細な成分の違いを高感度で検出できます。 |
|
■様々なアプリケーション
・タンパク質成分測定
・タンパク質変性測定
・脂肪酸測定
・水分分布測定
・異物検知
・脂肪量分布測定
|
|
|
|
※2量子井戸構造:
ナノメーターオーダーの厚さを持つ異なる種類の半導体が交互に積層した構造の総称。1ナノメーターは10億分の1メーター。 |
|
広い範囲をリアルタイムに計測することが可能で、生産ラインとの組合せで、原料・製品を全数チェックできます。PTP包装越しに薬品の成分をイメージング可能です。 |
|
|
|
今後の用途展開・開発方針 |
Compovisionは薬品、食品の品質管理・検査だけではなく、クリーム状製品の混合均一性検査、発酵食品・飲料やバイオ燃料などの生成途中における状態変化の監視、生体組成の状態観察等、多種多様な用途への適用が期待されています。 |
|
■【応用事例】血管内診断に用いる検査装置
(株)町田製作所が医療機器として開発をした 販売名:内視鏡ビデオシステム MVR-3000(製造販売届出番号:13B1X00246K0019I、販売:(株)町田製作所)には、Compovisionのカメラ・光源が搭載されています。
本器は、通常の可視光観察と近赤外光観察が切り替え可能なカメラ部と光源部を有するビデオシステムです。
今後は、このような医療分野への展開も図っていく予定です。
|
|
・「Compovision」は、住友電気工業(株)の登録商標です。 |
|