先日、駆け足でしたが、米国に出張しました。当社グループは、メキシコを含め北米に37社の関係会社があります。年1回各社の責任者が一堂に会し、経営の諸問題を報告し、自由討議を通じてお互いに意見、アドバイスを交換する「北米主管者会議」に出席するとともに、現地のグループ会社を視察してきました。
アメリカの今の状況や雰囲気などを、肌で感じることも目的の一つで、各社の力強い報告を聞きますと、本格的とは言えないまでも北米景気が上向いていることが確認できました。
アメリカの社会経済について、改めて考えてみますと、財政問題や格差問題は未だ払拭されず、また、保護主義の台頭、モンロー主義への回帰も不安視されます。一方で、シェール革命によりエネルギー問題の解決に目処がつき、人口は増加基調にあり、実質賃金も安定しています。また、産業分野に限らない活発なイノベーション活動、ダイバーシティに柔軟な社会、そして日本と同質の政治社会体制であることは、ご承知のとおりかと思います。
これらに加え、「自由と責任」、「公平性と開放性」、「透明性」、「柔軟性」、「スピード感」、「競争」が、アメリカでのビジネス理念です。まだ戦争の記憶が鮮明に残る1970年代、ある日本の若者が“Knock on the door.”の営業活動で工場を訪ね、自社の製品を現場で懸命にテストをしました。当時、まだ安かろう悪かろうの風評が強く残る日本製品を、テスト結果という事実に基づいて公平、正当に評価し、“Great!”の一言でビジネスが成立したとのこと。アメリカのビジネス倫理には、このDNAが今も脈々と流れていると、この若者は今も信じているとのことです。
ちょうど本稿を書いている時に、デトロイト市破綻のニュースが飛び込んできました。“Everything is all right.”ではありませんが、私たち産業界は、市場やビジネスの場としてのアメリカの重要性を再認識する必要があると思います。
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