関西国際空港が、今月で開港満20年を迎えるそうです。海外出張のときにはいつも利用しますが、旅客ターミナルビルの洗練されたフォルムは古さを感じさせませんので、「もうそんなに経つのか」という軽い驚きを覚えました。
関空開港後の歳月は、バブル崩壊後の「失われた20年」と重なります。この間の出来事で、すぐに思い出すのは、阪神・淡路大震災、ITバブル崩壊、9・11、リーマンショック、東日本大震災、福島第一原発事故など。インターネットの普及などで社会は大きく変わってきたはずですが、前向きな出来事の印象が薄く、若い世代が「自分たちは右肩上がりの時代を知らない」と言うのも、むべなるかな、であります。
私が物心ついてから社会に出るまでの時期は、戦後日本の復興・成長と重なっていました。混沌からの再生、国際社会への復帰、先進国に「追いつけ、追い越せ」・・・あの頃は、今ほど豊かではありませんでしたし、価値観の多様化といっても複雑なものではなく、国民が暗黙のうちに共有していた目標がありました。それに比べると、豊かになってしまった現在の日本では個人の価値観も多様化し、国民が一つの目標を共有することはとても難しいようにも思われます。
企業の中でも、グローバリゼーションの進展などに伴い、価値観はますます多様になっています。ダイバーシティ(多様性)が、ガバナンスの綻びの原因になるか、イノベーションのエンジンになるかは、社員が共通して「拠って立つもの」があるかどうか。すなわちこれが「企業理念」や「事業精神」でありましょう。表現は違えど、多くの企業が「社会が抱える問題を解決し、よりよい社会を構築する役割を担う」旨を企業理念として掲げていますが、この当たり前のようなことが、どれだけ社員の腑に落ちているかによって、ダイバーシティを強みにできるかどうかが分かれるのではないでしょうか。
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