休みの日に外に出ると、おそろいのユニフォームを身にまとったボーイスカウトやガールスカウトの一団を見かけることがあります。今から100年余り前のイギリスで、子どもたちの健やかな育成を目的に始められたこの活動においては、「そなえよ つねに」という言葉がモットーとされているそうです。
野外でキャンプをしたりする場合、天候が急変したり、道に迷ったり、慣れないことで体調を崩したり、と想定外のことが起こりますが、そのような時でも落ち着いて行動できるように、ふだんからさまざまな訓練をしているとのこと。「そなえよ つねに」の精神は、そんな活動のベースになっているのでしょう。
翻って、ビジネスにおいてはどうでしょう。話を急ぐあまり、つい前のめりになってリスクを見落としたり、「最悪のシナリオ」に「起こり得ない」と蓋をしてしまったりすることがあるかもしれません。リスクに充てるべきリソースが限られているため、対応を先送りにすることもあるのではないでしょうか。
先日の台風19号の接近にあたって、直撃が予想されたエリアでの列車の運休を早々と発表した鉄道会社の判断が話題になりました。社会生活や経済活動にも大きな影響が出ることが予想されるため難しい決断だったと思いますが、「乗客の安全確保」という方針をゆるがせにせず、事前に設定したルールに従って冷静に判断されたのでしょう。
お客様や自社の損害を最小限にとどめるために、どこまで待つのかは難しい判断です。ただ、有事の混乱の中で正しい判断を下すことは難しく、また判断を先延ばしにしたがゆえに取り返しのつかない事態になった例も少なくありません。その意味でも、「そなえよ つねに」の精神で、ふだんから、有事の際の最悪のシナリオを作ってシミュレーションしておくことは、とても有効だと思います。 |