※著作・制作 日本経済新聞社(2025年日経電子版広告特集)。記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます。
住友電気工業は2030年度に向けた長期ビジョンで「グリーンな地球と安心・快適な暮らし」をスローガンに掲げる。地球温暖化が進行し、持続可能な地球環境への取り組みがますます重要になるなか、「グリーンな社会」の実現にむけて住友電工グループはどのように貢献していくのか。「エネルギー」「情報通信」「モビリティ」の注力3分野を柱とする成長戦略や、長寿命で安全な大容量蓄電池として注目されるレドックスフロー電池の可能性について井上治社長に聞いた。
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――「住友電工グループ2030ビジョン」やその実現に向けたステップである中期経営計画で、「グリーン社会の実現」を打ち出しています。
当社グループは創業以来、安心・快適な社会の実現に資する製品やサービスを提供してきました。現在進行中の「中期経営計画2025」では「つなぐ・ささえる技術でグリーン社会の未来を拓く」ことを掲げています。持続可能な社会を実現するため、地球温暖化をはじめとする環境問題に取り組むことがますます重要になっています。当社が中長期的な企業価値向上に向けた注力3分野の一つに「エネルギー」を位置付けているのはこのためです。再生可能エネルギーに対応する幅広い製品やサービスを提供して脱炭素社会に向けて貢献しています。
――「中期経営計画2025」の数値目標(売上高4兆4000億円、営業利益2500億円、税引き前ROIC=投下資本利益率=8%以上)を1年前倒しで達成しました。
2024年度の連結決算は、売上高4兆6797億円、営業利益3206億円、税引き前ROIC9.3%と、いずれも現中期経営計画で25年度に達成するとしていた目標値を上回りました。「エネルギー」「情報通信」「モビリティ」の注力3分野を中心として着実に成果を上げた結果だと思っています。エネルギー分野では再エネ向けの電力ケーブルや受変電設備の需要が拡大し、情報通信分野では生成AI(人工知能)向けのデータセンター関連の受注が大きく伸びました。モビリティ分野は自動車用ワイヤーハーネス(組み電線)の需要が堅調でした。最終年度となる25年度は、米国のトランプ政権の関税政策の影響で前年度比では減収減益を見込んでいますが、目標値は超えられるとみています。
――25年度の先には長期ビジョンで示した30年度のあるべき姿があります。どのような道筋を考えていますか。
30年度に連結売上高5兆円、ROIC10%超を達成することを目指し、引き続き注力3分野を軸に成長を目指します。加えて、持続的な成長のためには未来の収益源を育てていく必要があります。その一つとして期待しているのがレドックスフロー電池です。
――レドックスフロー電池とはどのような製品ですか。
電解液を循環させながらイオンを酸化還元反応させることで充電・放電する大容量蓄電池です。当社が開発したレドックスフロー電池は、不燃性の電解液を用いており、劣化しにくく、運用可能な期間は20年超、今年度発売開始予定の新型では30年と、ほかの蓄電池に比べて長いことが特長です。また、機器材料は難燃性素材でできているため、リチウムイオン電池のような発火の心配はありません。さらに電解液はリユースでき、その他の機器材料も99%リサイクル可能であり、エコフレンドリーな点も評価されています。
――どのようなところに導入されていますか。
風力や太陽光発電などの再エネの蓄電設備として使われています。再エネは自然現象に依存して発電するため、需要に応じて発電量をコントロールすることができません。余剰電力を蓄電池にためることにより、需要に対して安定的に電力を供給することができます。北海道電力ネットワーク南早来変電所に納入したものが商用では最大規模で、風力発電の出力を安定させるために使われています。また、地域で再エネを活用する新潟県柏崎市や、鹿児島県南九州市、そして島根県の隠岐諸島などでも採用が進んでいます。海外では、米国カリフォルニア州で15年からの実証実験を経て商用運転が行われています。同州は環境問題への関心が高く、難燃性やリサイクル性が高いことも評価されました。
北海道電力ネットワーク南早来変電所に納入したレドックスフロー電池
――普及のための課題は何ですか。
レドックスフロー電池は電解液を循環させるためのタンクやポンプが必要なことから、ある程度の大きさが必要です。小型化に取り組んだことで、現在は20㌳のコンテナ3本から設置できるようになりました。もっと小型化して設置可能なエリアを拡大し、需要を広げたいと考えています。また、モノづくりの基本として、原価の低減は課題です。生産量を増やすことや、より安価な原料や効率的な機器材料を開発し、導入することにより初期費用の引き下げに取り組んでいます。設置数が増えるのに伴い、定期点検や修理などメンテナンスの体制を整えることも必要です。
――「2030ビジョン」において、レドックスフロー電池はどのような位置付けですか。
スローガンに掲げた「グリーンな地球と安心・快適な暮らし」の実現のための切り札がレドックスフロー電池です。当社グループは、従業員、お客様、お取引先、地域社会そして株主・投資家という5つの主要なステークホルダー(利害関係者)と共に歩んでいく「五方よし」という方針を示しています。ステークホルダーの皆さんにしっかりと還元していくためには、ビジネスを着実に成長させていく必要があります。現在好調な事業に加えて、次世代の成長の柱となる事業も育てていかなければなりません。
レドックスフロー電池の事業規模は、今はまだ小さいですが、早期に年間100億円を超える規模の売上高として、収益化します。日本国内では地方も含めた引き合いが増えていますし、海外の顧客からも関心が高まっています。初期費用の高さがネックになることもありますが、安全で環境にやさしいこと、長時間充放電できることや、リサイクルできることなど、トータルのコストや効果を理解していただけるよう努めています。
――レドックスフロー電池の開発から、いったん撤退した時期があったそうですね。
当社がレドックスフロー電池の開発に着手したのは1980年代からと古く、2000年代にようやく製品化にこぎつけたものの、改良すべき課題があり、05年にいったん中止を決めました。しかし、当時のエンジニアたちが「もう一度やりたい」と声を上げ、改めて開発に取り組むことになりました。
ちょうどそのころ、米国がグリーン・ニューディール政策を打ち出すなど、時流が変わったことも追い風になりました。世界的に再エネへの関心が高まり、安全で高効率な大容量蓄電池のニーズが高まったのです。当社グループの主力商品の一つである自動車用ワイヤーハーネスは、私が初めて関わった1990年ごろはまだ規模が小さく、世界シェアを5%に増やすことが目標でした。今ではシェア25%です。レドックスフロー電池もそのような事業に育てていきたいと考えています。