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2009年 モノづくり篇

SEI CSR EYE 事業を通じた社会への貢献 モノづくり篇

モノづくりのDNAを武器に、より強靱な体質へ。

未来へ向けた生産技術革新が胎動期を迎えている。

住友電工には「自動車」「情報通信」「エレクトロニクス」「電線・機材・エネルギー」「産業素材」の5つの事業分野があり、20以上の事業部を擁しています。製品が多岐にわたり生産方式も大きく異なるため、これまでは各事業部門が生産技術に関する知識やノウハウを蓄積してきました。そのような歴史背景の中、住友電工で初となる全社横断的なモノづくり強化活動がスタートしたのは2003年10月のこと。市場環境が大きく変化する中で、お客さまのニーズに迅速・的確に対応した製品を通じて社会へ貢献するためには、グループ・グローバルな「モノづくり力」の強化が必至であるとの認識からです。それから5年あまり。革新の萌芽が具体的な形を見せはじめました。

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事業部間の共通言語をつくる必要があった。
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川井 文義
執行役員
生産技術本部副本部長 生産技術部部長

私たち生産技術部では、2003年に生産技術革新委員会を立ち上げ、全社横断的なモノづくり強化活動をスタートさせた際、2つの課題を掲げました。

1つは市場ニーズの変化への対応です。今、私たちメーカーに要求されるのは、少量・多品種のモノづくりです。しかし、当社が製造・販売している生産財の多くは従来型の大ロット・まとめ生産型で、そのままで少量・多品種に対応しようとしても多くの在庫をかかえることになります。在庫問題を解消し、変種・変量・短納期を達成するためには、現場の個別カイゼンだけでは追いつきません。生産システムを構築しなおし、基礎固めをする必要がありました。それは、事業部単位ではなく、グループ横断的な仕組みでなければならなかったのです。

住友電工110年の歴史で蓄積されたモノづくりの技術・ノウハウ諸々を体系化し、より普遍性・継続性の高い“共通言語”として構築できないだろうか、という発想から生まれたのが、SEIPS(SEI Production System)です。

SEIPSは常に進化し続ける生産システム。
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当社の製品・プロセス形態

SEIPSでは、当社の製品群を「A型(Assembly:組立)」「B型(Bulk:材料)」「C型(Cable:長もの)」の3つの形態に分け、各生産システムの共通性を追求します。最終製品や市場が異なるモノでも、生産システムが共通であれば、技術や改善の知恵を共有することができます。

取り組みとしてはまだ5年足らずで、グループ内の認知度向上はこれからの課題ですが、2005年からSEIユニバーシティの教育カリキュラムに取り入れ、2008年末時点では、1700人程度のグループ社員がこのシステムを学び、現場へ持ち帰っています。

SEIPSは常に進化しなければなりません。喫緊の問題解決はもちろん、10年、20年と継続して体質強化を進め、市場の変化に勝ち続けられる生産システムにしていきたいと考えています。

実機に触れる「モノづくり学部」の誕生。
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テクニカルトレーニングセンター

2つ目の課題は、グループ・グローバルへの対応です。SEIPSはグループ・グローバルのための共通言語でもあり、この共通言語を全社員へ教育していく機関として立ち上げたのが「テクニカルトレーニングセンター(TTC)」です。当社グループには全グループ社員を対象とする教育・研修制度SEIユニバーシティがありますが、技術研修については、従来それぞれ事業部ごとのプログラムに任されていました。そこで、モノづくり力の強化を目的とした施設としてTTCを伊丹製作所内に2008年10月に開設しました。

敷地面積9,050m2の施設には、めっきや押出ラインなど豊富な実機を装備し、実技を中心とした全97の研修コースをスタートさせました。若手を中心に全員教育を施す「階層別教育」、生産技術や設備技術等の職種別の専門教育を行う「機能別教育」、グループの共有固有技術について横串教育を行う「ニーズ教育」と、充実したプログラム内容です。大学との共同研究から新たな講座が生まれるなど、これからもますます充実させていきます。

グループ・グローバルを牽引する人材づくり。
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テクニカルトレーニングセンター研修風景

モノづくり教育再武装によって、より強靱なモノづくり体質にし、生産性を上げること、およびロスを低減させることは、省エネを進めることでもあり、私たちメーカーにとっての使命といえます。全社員への基礎的な技能教育によって内部固めを行い、より強い組織へと生まれ変わるときです。

さらに、基礎研修に留まらず海外展開を視野に入れたスタッフ教育を行うことでグローバル人材育成も積極化していきます。海外からもナショナルスタッフが研修に訪れ、多くを吸収していきます。また、TTC自体にも未来を見据えた海外分校構想があります。今こそモノづくりのシステム構築と人材育成で、基盤をしっかり固めるとき。住友電工グループ独自の、モノづくり文化を強く確実に育てていきます。

社員のモチベーションアップにも役立てたい。
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生産技術部
テクニカルトレーニングセンター
センター長 戸川 契

画期的な設備とプログラム、このTTCの研修をより多くの社員が受けられるよう、積極的に情報提供を行うなど、参加しやすい環境づくりを心がけています。実際、研修を終えた社員からは「職場から少し距離を置くことで冷静に現場を見つめることができた」など、長期研修ならではの効果が見られています。研修をきっかけに人と技術のネットワークができ、情報収集やアイデア創出にも役立っているようです。

2009年1月からは、TTCを舞台にMKP(モノづくり革新プロ実践道場)、GKP(現場改善プロ実践道場)、KKP(モノづくり基盤強化研修)の「3KP」研修がスタート。当社グループのS(安全)・E(環境)・Q(品質)・C(コスト)・D(物流、納期)・D(開発)における体質強化を目的とした実践型研修プログラムを行っています。例えば「MKP:モノづくり革新プロ実践道場」では、将来の工場長や製造部長候補生である入社15年前後のエンジニア30人前後を選抜し、最長2年間の全社的なテーマに取り組みます。テーマは、製造現場から“問題の棚卸し”をして出てきた重要課題ばかりです。

まだ半年経過したところですが、これまでに具体的な数値目標達成や不良ゼロ化などの課題を解決するなど、すでに成果が出ています。現場各部門からも“次はうちの課題をぜひ”という声も上がるなど期待が大きくふくらんでいます。

※2009年7月取材

※テクニカルトレーニングセンターにつきましてはこちらをご覧下さい。

社長松本正義Blog 2008年11月04日 テクニカルトレーニングセンター開所式(1)
社長松本正義Blog 2008年11月07日 テクニカルトレーニングセンター開所式(2)

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