プロジェクトid 社会課題への挑戦 快適を、その現場に── 産業用電線の進化をけん引する「S-FREE®

課題解決事例 01 造船所の作業者負荷を軽減せよ ~「S-FREE®高強度アルミ導体溶接用ケーブル」~

作業性確認に参加した事務スタッフの女性からも、SーFREE®は軽く、取り回しやすいと評価も高かった(JMU呉事業所)

軽量化、耐久性、耐熱性を実現した溶接用ケーブル

広島県呉市——古くから造船の街として知られている。ここに造船所を構えるのが、ジャパン マリンユナイテッド(株)(以下、JMU)だ。JMUは我が国の造船業界をリードしてきたユニバーサル造船とアイ・エイチ・アイ マリンユナイテッドの2社が統合して2013年に誕生した、造船業界のリーディングカンパニーである。豊富な経験と高度な技術力によって、コンテナ船を中心に、タンカー、艦船、旅客カーフェリーまで、幅広く造船事業を展開している。船体は、鉄の板を溶接して繋ぎ合わせて造られる。したがって溶接は船体の品質確保を担う作業であり、工数の割合も大きいため、造船施工の中で、最も重要な工程の一つとされる。この溶接で必要とされる電力供給用のキャブタイヤケーブルとして、S-FREE®の高強度アルミ導体溶接用ケーブルが採用された。その経緯をJMU呉事業所 造船部の吉川正幸氏に聞いた。

「従来当社は、さまざまなメーカーの溶接用ケーブルを採用していました。しかし、老朽化に伴う更新や新規購入の計画が進む中で、メーカーごとに特性が異なりバラツキがある溶接用ケーブルを統一する動きが出てきました。それまで呉事業所は住友電工グループと取引がありませんでしたが、試験的に導入したケーブルの被覆が特徴的で扱いやすい製品だと感じました。そして2014年頃、今までにない新しいケーブルの提案があったのです。それが、高強度アルミ導体溶接用ケーブルです」(吉川氏)

過去、複数のメーカーからアルミ導体を採用した軽量の溶接用ケーブルが提案されていた。しかし、耐久性に問題があり採用には至っていなかった。住友電工グループの高強度アルミ導体溶接用ケーブルは、「軽い」というだけで受け入れられたわけではなかった。従来の銅(軟銅)と同様の特性を示すかどうか、耐久性、耐腐食性、耐熱性、耐引きずり性など、想定される環境下での各種試験が1年かけて行われた。その結果、「軽い」「銅と遜色のない」ケーブルであることが実証され、採用に至ったのである。従来品と比較して、ケーブル質量で50% 以上の軽量、耐熱温度で60℃から90℃へ耐熱性を向上、被覆摩耗量で60%以上の軽減を達成している。

呉事業所 造船部 計画グループ 工作技術チーム 吉川 正幸氏
呉事業所 造船部 計画グループ 工作技術チーム
吉川 正幸氏
ジャパン マリンユナイテッド(株)呉事業所 造船部 計画グループ 工作技術チーム チーム長 草場 卓哉氏
ジャパン マリンユナイテッド(株)
呉事業所 造船部 計画グループ 工作技術チーム チーム長
草場 卓哉氏

「軽い」という作業者の喜びの声

本格的な導入は2016年8月。溶接作業の現場はどう変わったのか。吉川氏と同じく造船部でチーム長を務める草場卓哉氏は、高強度アルミ導体溶接用ケーブルの導入によって、労働環境が大きく変わったと言う。

「現場の作業者からは、とにかく軽い、楽になったという声を聞いています。溶接作業現場は重いケーブルをかついで階段を昇降するなど、作業負荷は大きいものがありました。作業者には中高年層も少なくありません。今、新規購入の溶接機にはアルミケーブルを標準に入れ替えを進めていますが、台数も多く、まだ全機導入には至っていません。現場からは、いつになったらアルミのケーブルを入れてくれるのかという声も寄せられています。それは、この溶接用ケーブルへの高い評価の証だと思います。また、女性が現場により進出しやすい職場環境作りにおいて、ケーブルの軽量化は後押しになると思いますね」(草場氏)

今後、溶接用ケーブルで求められるものは何なのか。草場氏は、溶接作業における造船ならではの特徴を指摘する。

「ライン生産方式が可能な他の業界と異なり、船ごとに対応する造船の溶接作業にはどうしても人の手が必要です。一層の作業負荷の軽減、作業効率化のためにも、より細く、より軽い溶接用ケーブルを住友電工グループに開発してもらいたいと思っています」(草場氏)

前出の吉川氏も住友電工グループに寄せる期待は大きい。

「今、当社は住友電工グループが供給する溶接用ケーブルの積極的導入を図っています。その過程で、被覆に着色することでケーブルを識別する新しい試みや、電線サイズの多様化など、さらに進化した溶接用ケーブルの開発も依頼しています。現場の改善に共に取り組むパートナーとして今後も、思いもよらない工夫、発想によって、より効率性を高めた溶接用ケーブルを生み出して欲しいですね」(吉川氏)

アーク溶接。より安全、快適が求められる高所作業でも、S-FREE®は寄与している(JMU呉事業所)
アーク溶接。より安全、快適が求められる高所作業でも、S-FREE®は寄与している(JMU呉事業所)
作業性確認に参加した事務スタッフの女性からも、SーFREE®は軽く、取り回しやすいと評価も高かった(JMU呉事業所)
作業性確認に参加した事務スタッフの女性からも、SーFREE®は軽く、取り回しやすいと評価も高かった(JMU呉事業所)

造船所内での作業風景(ジャパン マリンユナイテッド(株)呉事業所)

課題解決事例 02 安定と信頼の排水ポンプシステムの構築
~「S-FREE®キャブタイヤケーブル」~