プレスリリース
短距離光伝送に適した新型マルチコア光ファイバを開発
~世界最高密度のマルチコア光ファイバケーブルを実現~
2015年3月26日
住友電気工業株式会社
当社は、短距離伝送用途に適した、125μmのガラス径の中に8つのコアを内蔵する新型マルチコア光ファイバを開発し、世界最高密度のマルチコア光ファイバケーブルを実現いたしました。
背景
スーパーコンピュータの計算並列化やデータセンターの処理データ量の増大にともない、短い伝送距離で大容量のデータを高密度に伝送する光インターコネクト*1 技術の研究開発が盛んにおこなわれています。一方で、近年、1本の光ファイバで複数のコアを内蔵するマルチコア光ファイバ(MCF)*2 の研究開発が活発に行われており、大容量伝送システムを実現する次世代光ファイバとして期待されております。
今回の成果
今回、汎用光ファイバ*2 と同じガラス外径である125 μmのクラッドを有し、波長分散*3 の小さな1.3μm付近の波長帯において汎用シングルモードファイバ*2 と同等の光学特性を有するコアを8つ内蔵し、光信号が異なるコアに漏洩し信号品質を劣化させるコア間クロストークも抑制したMCFを世界で初めて開発いたしました。
これまでに開発されたMCFの多くは、各コアの良好な光学特性・コア間クロストークの抑制を実現しながらコア数を増大するために、クラッド外径を汎用的な光ファイバの125 μmより太く*4 したものでした。今回、8つのコアを内蔵することで、既に広く用いられている25Gb/s信号の送受信技術を用いて、1本の光ファイバで100Gb/sの双方向通信が可能となり、また、各コアの光学特性は、1.3μm帯で高集積なデバイスを実現するシリコンフォトニクス技術*5 との高い親和性が期待されます。更に、汎用光ファイバと同じガラス径の実現により、汎用光ファイバと同等の機械的信頼性*3 を実現でき、また、汎用光ファイバ向けのさまざまな関連技術(ケーブル化技術や、コネクタ等の接続関連技術など)を活用することができます。
実際に、今回開発したMCFを12本内蔵するMCFケーブルも試作し、3mmの外径の中に96コアを内蔵する世界最高密度の光ファイバケーブルを実現いたしました。試作した1.1kmのMCFケーブルの1.3μm帯での伝送特性を、当社製100Gイーサネット(100GBASE-LR4)用光トランシーバを用いて評価し、光ファイバ1本あたり、汎用シングルモードファイバの8倍となる800Gb/s(8コア×4波長×25Gb/s)の信号を、有意なパワーペナルティなしにエラーフリー伝送が可能なことも確認いたしました。このことから、試作したMCFケーブルの伝送容量は少なくとも9.6Tb/s(12ファイバ×8コア×4波長×25Gb/s)の伝送が可能であり、送受信方式の改善による更なる伝送容量拡大の可能性が拡がっております。
今後の展望
今後当社は、さまざまな通信用途に用いるMCFの実用化に向けて、ファイバの生産性の向上や接続関連技術の開発などに取り組んでまいります。
なお、今回の成果は、米国ロサンゼルスにおいて2015年3月22日(日)~26日(木)の日程で開催されている世界最大規模の光ファイバ通信関係の国際会議であるOptical Fiber Communication Conference (OFC) 2015で高い評価を得て、ポストデッドラインペーパー*6として採択され、3月26日に発表いたします。
本研究の一部は、独立行政法人情報通信研究機構(NICT)の委託研究「革新的光ファイバの実用化に向けた研究開発」の一環として行われました。
<用語 解説>
主な特徴 | |
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汎用光ファイバ | 通信用に規格化されている光ファイバ。クラッド径は125μmであり、コアの種類は規格により様々である。 |
汎用シングルモードファイバ | 汎用光ファイバのうち、コアが小さく、光の通り道が1つしかないタイプのもの。 |
マルチコア光ファイバ | 複数のコアを個別に光信号の伝送路として用いる光ファイバ。コア間クロストークの抑圧が必要。 |
以上