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プレスリリース

超高強度超電導線DI-BSCCO Type HT-NX販売開始

製品・技術情報

2015年4月15日
住友電気工業株式会社

当社は、従来250-270MPa(*1)級の許容引張り強度を有していた高強度ビスマス系高温超電導線材の引張り強度を大幅に強化、400MPa級超の超電導線材の開発に成功し、超高強度超電導線DI-BSCCO Type HT-NXとして販売を開始します。
この超電導線は、「高強度Bi-2223線材の開発」として、一般社団法人 未踏科学技術協会より第19回超伝導科学技術賞を受賞しました。(授賞式は4/17)

当社は、2004年にビスマス系高温超電導線材の工業製品化を実現して以来、数多くのお客様に新規にご採用を頂くとともに、既存の銅線や、金属系超電導線材への置き換えを果たしてきました。しかしながら、今後さらに多くのお客様にご採用頂くうえで障壁となっていたのは、主に臨界電流値(*2)と許容引張り強度でした。

化学・医療等々の最先端の基礎科学分野では、磁場を用いた研究・分析・診断等の装置への高磁場化の要求が年々増しております。これに加えて、各種装置類の小型化ならびに高精度化・高感度化への要求も、同様に増加の一途をたどっております。

当社が開発した、超高強度ビスマス系高温超電導線材は、従来の高強度ビスマス系高温超電導線材と比較して、約50-60%の引張り強度の向上を実現しました。これにより、線材がより大きな電磁力を受けることが可能となり、従来の高強度線材では実現できなかった二十数テスラ(*3)程度の超高磁場領域や大型のマグネットにも、ご使用が可能となりました。

これらの超高磁場、高電磁力領域でのニーズに加えて、既存の銅線並びに金属系超電導線材と比べて高い電流密度を有することにより、各種装置類の小型化も可能となります。さらには、同線材の持つ超電導線材としての高い次元の基本性能により、磁場の精度や安定性をより高めることが可能となり、各種装置類の高感度化にも寄与することが期待されます。

また、従来の高強度線材と比べて、許容両曲げ直径の約30%低減を実現したことにより、曲げ径がより小さいコイル等への適用拡大が可能となります。

今後さらに、臨界電流値(*2)200A超のビスマス系高温超電導線材の量産体制の整備を目指し、お客様が使いやすい超電導線材の提供を進めていきます。

この超電導線材がもたらす実用超電導線材としての科学的成果は学術的にも高い評価を受け、このたび、一般社団法人 未踏科学技術協会より第19回超伝導科学技術賞(*4)を受賞しました。

DI-BSCCO Type HT-NX

【従来型高強度/超高強度ビスマス系高温超電導線材のスペック】

DI-BSCCO Type HT series - Specifications
高強度 超高強度
Type HT-SS Type HT-CA Type HT-NX
平均幅 4.5 mm 4.5 mm 4.5 mm
平均厚さ 0.29 mm 0.34 mm 0.31 mm
補強材料(厚さ) ステンレス鋼
(20μm)
銅合金
(50μm )
ニッケル合金
(30μm )
単長 500mまで
臨界電流 (77K,自己磁場) (170 A,) 180 A, 190 A, 200 A
許容引張り張力* (RT) 230 N** 280 N** 410 N**
許容引張り強度* (77K) 270 MPa** 250 MPa** 400 MPa**
許容引張り歪み* (77K) 0.4%** 0.3%** 0.5%**
許容両曲げ直径* (RT) 60 mm** 60 mm** 40 mm**

* 臨界電流値が95%まで低下する値。**参考値(保証値ではありません)

【超高磁場マグネットへの超高強度ビスマス系高温超電導線材の適用イメージ】

超高磁場マグネットへの超高強度ビスマス系高温超電導線材の適用イメージ

*1 MPa(メガパスカル):応力や圧力の単位。
1気圧=約1000hPa(ヘクトパスカル)=約0.1MPa。

*2 臨界電流値:
超電導状態(抵抗ゼロ)で流すことのできる電流値。

*3 T(テスラ):
磁束密度の大きさを表す単位。1T = 10,000ガウス。

*4 超伝導科学技術賞:
弊社は既に特別賞3件、超伝導科学技術賞8件を受賞。
授賞式は4/17タワーホール船堀(東京)にて実施されます(詳細下記URL)。

  • 「DI-BSCCO」は住友電気工業株式会社の商標または登録商標です。

以上

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