プレスリリース
光通信ネットワークの構築に欠かせない高品質な光ファイバの量産性に優れた製造法である「VAD法」が世界的に権威のあるIEEEマイルストーンに認定
2015年5月21日
日本電信電話株式会社
古河電気工業株式会社
住友電気工業株式会社
株式会社フジクラ
日本電信電話株式会社(以下、「NTT」、東京都千代田区、代表取締役社長:鵜浦博夫)、古河電気工業株式会社(以下、「古河電工」、東京都千代田区、代表取締役社長:柴田光義)、住友電気工業株式会社(以下、「住友電工」、大阪市中央区、代表取締役社長:松本正義)、及び株式会社フジクラ(以下、「フジクラ」、東京都江東区、代表取締役社長:長浜洋一)の4社が共同で研究開発・普及促進した「高品質光ファイバ量産製法として用いられるVAD法(1977年-1983年)」※1の功績が、世界規模での急速な光通信ネットワーク構築に貢献したとして、電気・電子・情報・通信の技術分野における世界最大の学会であるIEEE※2より、世界的に権威のある「IEEEマイルストーン」に認定されました。
ガラス光ファイバは1970年代に長距離通信用の光伝送媒体として期待され、光ファイバの研究が世界中で活発に行われるようになりました。このような状況のなか、NTT(当時、日本電信電話公社)、古河電工、住友電工、フジクラ(当時、藤倉電線)は、1975年に光ファイバの共同研究体制を立ち上げ、共同で石英系ガラス光ファイバ技術の研究開発を開始しました。その過程において、1977年にVAD法と呼ぶ量産性に優れた光ファイバの製造方法が発明されました。
VAD法の発明と4社の共同研究体制での改良により、1983年には高品質かつ低損失な光ファイバを量産できる段階までVAD法の技術を高め、研究段階から商用化に移行させることに成功しました。現在、VAD法は世界で最も多く採用されている光ファイバ量産法であり、世界で生産されている通信用光ファイバの約60%はVAD法を基本技術として製造されています。このように、VAD法は光ファイバ量産法として広く用いられており、今日の情報通信社会の基盤である光通信ネットワーク構築に大きく貢献しています。
NTT、古河電工、住友電工、及びフジクラは、今後も世界をリードする技術を通じて、社会や産業、学術の発展に寄与していくとともに、安心、安全で豊かな社会の創造に貢献していきます。
なお、VAD法の概要に関する詳細は別紙の通りです。
■IEEEマイルストーンとは
「IEEEマイルストーン」とは、IEEEにより、電気・電子・情報・通信分野における画期的な技術革新の中で、開発から25年以上にわたり国際的に高い評価を受けてきた技術革新の歴史的業績を称える表彰制度として1983年に設立されたものです。
過去の受賞例では、19世紀における電話やエジソン研究所※3、マルコーニの無線通信※4など、近代化の基盤となった歴史的施設・技術や、20世紀では、テレビ、コンピュータ、インターネットなど情報通信を支える技術が認定されています。
なお、NTTは、KDDI株式会社と共同で開発・普及推進した「G3ファクシミリの国際標準化(1980年)」の功績、およびNTTが研究開発・普及促進した「高圧縮音声符号化に用いられるLSP(線スペクトル対)方式の開発、普及(1975年)」の功績が、それぞれ2012年4月※5、2014年5月※6に「IEEEマイルストーン」に認定されています。(参考:過去の日本での受賞一覧 )
■参考
この度の認定に伴いIEEEより贈呈された記念の銘板(写真1)は、各社のVAD法の研究開発や光ファイバ製造とゆかりのあるNTT厚木研究開発センタ(神奈川県厚木市:写真2)、古河電工三重事業所(三重県亀山市:写真3)、住友電工大阪製作所(大阪市:写真4)、フジクラ佐倉事業所(千葉県佐倉市:写真5)に常設展示いたします。
■VAD法の概要
通信用光ファイバは、光ファイバの基になる円柱状のガラスの塊である母材を作製し、母材を加熱して細い糸状に線引きすることで作られます。光ファイバ通信の普及には、光ファイバの低損失化に加えて量産性に適した製造方法が必要でした。光ファイバの量産化には、いかにして大型の母材をしかも高速に製造できるかがキーになっていました。
VAD法は、反応性の高い火炎加水分解法によりガラス微粒子(SiO2-GeO2)※7を出発材の先端に下方に堆積しながら堆積した部分※8の外側をSiO2ガラスの微粒子で覆い※9、多孔質ファイバ母材を作製します。VAD法は一軸方向(上方)に引き上げながら多孔質ガラスを成長させることができるので大型のファイバ母材を作製することができます。続いて作製した多孔質ガラスをヒータにより加熱することで透明ガラス化したファイバ母材が得られます。ファイバ母材を線引きすることで光ファイバが作られます。図1はVAD法を基本技術とする光ファイバ製造の一連の流れ(多孔質ガラスの堆積、成長、透明ガラス化、線引き)を模式的に示しています。
ファイバ母材の製造法には、VAD法の他に代表的なものとして、MCVD法※10とOVD法※11があります。MCVD法は、母材への不純物の混入が少なく、低損失な光ファイバの実現に適した方法です。しかし、ガラス管の内側にガラス微粒子を堆積するため母材の太さと長さに制限があり、長距離用光ファイバのための大型ファイバ母材の作製には適していません。また、MCVD法のガラス微粒子は熱酸化反応によって生成されるため、火炎加水分解法よりも反応速度が遅いという欠点があります。OVD法は心棒の周りに火炎加水分解法によりガラス微粒子を堆積し多孔質ファイバ母材を作製します。太さ方向にはファイバ母材の大型化は可能ですが、長さ方向は心棒の長さに制限されます。また、OVD法は多孔質ファイバ母材を高温処理により透明ガラス化する前に心棒を引き抜く必要があります。この工程において多孔質ファイバ母材と心棒が接している面に傷などが入りやすく、工程的な難しさがあります。
以上のように、VAD法はファイバ母材の大型化、量産化に適した製造法であり、VAD法の発明により、光ファイバの量産化への道が開けました。
(写真1)IEEEより贈呈された記念の銘板
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(写真2)NTT厚木研究開発センタ
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(写真3)古河電工 三重事業所
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(写真4)住友電工 大阪製作所 (研究本館 「WinD Lab」)
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(写真5)フジクラ 佐倉事業所 (先端技術総合研究所)