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プレスリリース

世界最小サイズの高速センシング用光源「DFB-QCL CANモジュール」のサンプル出荷を開始

製品・技術情報

2018年1月22日
住友電気工業株式会社

住友電気工業株式会社(本社:大阪市中央区、社長:井上 治 以下、当社)は、波長7μm帯において、単一モードで80℃までの素子温度で連続発振が可能な、小型のDFB-QCL*1 CANモジュールを開発し、サンプル出荷を開始しました。連続発振が可能なQCLモジュールとしては世界最小サイズで、センシング用光源として、産業、環境、医療分野での使用が見込まれます。温調器内蔵型(Φ15.4mm)と無温調器型(Φ5.6mm)の2種類があり、温調器内蔵型については駆動するための専用マウントも同時に供給可能です。

DFB-QCL CANモジュール

DFB-QCL CANモジュール
(左 : 温調器内蔵型、右 : 無温調器型)

波長4~20μmの中赤外領域にて、単一モードで連続発振が可能なDFB-QCLは、小型で高速のセンシング用光源として、大気汚染ガス、温室効果ガス、毒性ガスなどの高感度リアルタイム計測、および呼気分析や血糖値計測などの医療診断への応用が期待されています。しかし、従来のDFB-QCLは、素子自体の消費電力が大きく(>5W)、レーザ駆動時に大量の熱を発生するために、高い放熱能力を持つ、大型で高価なHHLパッケージ*2に実装する必要がありました。

その結果、モジュールの小型化や低コスト化が困難で、QCLを広く普及させる上での大きな課題となっていました。また、高温環境下での連続発振が困難なことも、本レーザの使用を制限する要因となっていました。

このたび当社は、長年培ってきた量子構造設計技術を用いて創出した独自の発光層構造を採用した、低消費電力DFB-QCLモジュールの開発に成功しました。本モジュールは、CH4(メタン)やSO2(二酸化硫黄)、H2S(硫化水素)などの計測用として期待される7μm帯の波長において、汎用のCANパッケージ*3で安定的に連続発振することが可能です。

開発したDFB-QCLモジュールの特長

  1. 従来のHHLモジュール(32 x 45 x 18 mm)に対して、約8%(温調器内蔵型)、及び約1%(無温調器型)までの大幅な容積低減を実現
    • 温調器内蔵型:Φ15.4mm CANパッケージに温調器とDFB-QCL素子を収納
    • 無温調器型:Φ5.6mm CANパッケージにDFB-QCL素子のみを収納。外部に温調器を取り付けることにより、内蔵型と同等の特性を得ることが可能
  2. QCL素子の消費電力を2W以下にまで低減し、発熱を大幅に抑制することで、80℃までの素子温度範囲で、連続発振、単一モード動作を実現
  3. 高感度センシング用として十分な光出力

    素子温度20℃で30mW超、60℃でも10mW超(いずれも典型値)と、高感度センシング用として十分な光出力を実現。本モジュールを用いて、1.3ppb*4までの高感度なメタンセンシングも実証済み。

なお当社は、5μm帯や8~9μm帯など、他の波長帯で発振するDFB-QCLの開発も進めています。

本モジュールは、2018年1月30日(火)~2月1日(木)に米国・サンフランシスコで開催されるSPIE Photonics West 2018、および2018年3月14日(水)~16日(金)に中国・上海で開催されるLASER World of PHOTONICS CHINAに出展予定です。また、Photonics West 2018の招待講演にて、上記高感度メタンガスセンシングに関する発表を行う予定です。


*1 DFB-QCL:
Distributed Feedback Quantum Cascade Laser (分布帰還型量子カスケードレーザ)の略。中赤外での発振の為に、発光層にカスケード構造と呼ばれる特殊な構造を導入し、更に波長選択構造を内蔵することによって、単一モード発振を可能にした半導体レーザ。

*2 HHLパッケージ:
High Heat Load パッケージの略。箱型の大型パッケージで、放熱性に優れる為、加工用の大出力半導体レーザ等、消費電力が大きいレーザ用に用いられる。

*3 CANパッケージ:
リードピン付きの金属ステムに、出射窓付きの円筒形のキャップを被せて気密封止したパッケージで、安価で小型化に適するため、DVD用や光通信用等の低消費電力半導体レーザに広く用いられている。

*4 ppb:
parts per billion(十億分率)の略。成分比や濃度を表す単位で、1ppbは1%(パーセント)の1千万分の1に相当。

以上

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