プレスリリース
蓄電池の世界初の平常時・災害時併用運転(デュアルユース)の追加実証を決定
―レドックスフロー電池を活用し、電力インフラのレジリエンス(回復力)強化を目指す―
2021年1月22日
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
住友電気工業株式会社
NEDOと住友電気工業(株)は大型の定置用蓄電池「レドックスフロー電池(以下、RF電池)*
このたび追加する実証は2021年秋から12月まで実施する予定で、平常時は電力取引で収益を得ながら、災害時には自立電源として停電地区に電力を供給する手法等を検証します。これにより同州で近年多発している計画停電、昨年発生した輪番停電等に対する電力インフラのレジリエンス(回復力)を強化するとともに再生可能エネルギーの導入拡大や温室効果ガスの排出削減を目指します。
1.概要
米国カリフォルニア州は、2045年までに州内の電力の100%を温室効果ガスが排出しないエネルギーで賄うとする州法「SB100」を成立させるとともに、再生可能エネルギーの大量導入に伴う電力品質低下の問題解決策の一つとして蓄電設備の導入を促進しています。さらにカリフォルニア州では近年、森林火災などの災害による停電、また、昨年は猛暑下で空調の負荷が急増するなどによる緊急の輪番停電が発生し、社会問題になりつつあります。また、停電時には、データセンターなどの需要家側で、特定の分電盤(重要負荷分電盤)に接続された回路にのみ蓄電池の電気が流れる重要負荷を対象とした停電対策が行われていましたが、さらに広域での停電対策と電力システムのレジリエンス(回復力)の強化が求められてきました。こうした課題解決の一つとして、非常時に商用系統から切り離した配電網で蓄電池を電源とするマイクログリッドを形成し、電力供給を継続することが期待されています。
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、カリフォルニア州との基本協定書(MOU)に基づき、2015年9月に住友電気工業株式会社を委託先として、現地の大手電力会社協力のもと、同州サンディエゴに長寿命で大型化に適した定置用蓄電池「レドックスフロー電池(RF電池)」を設置した設備を活用して送配電網の電力品質向上に関する実証事業*
を進めてきました。このRF電池は、2018年12月より系統運用者であるCAISO (California Independent System Operator)との電力取引運用にも供されています。RF電池は、充放電のパターンやサイクル数が劣化要因にならず、また充電残量をリアルタイムで計測できるという特長があります。この特長を生かして、電力取引においては自由度の高い入札パターンを選択することができ、エネルギー市場(電力量の取引市場)とアンシラリーサービス* 市場の、両市場での収益向上に向けた入札戦略の開発、実証* を行ってきました。このたび実証事業を延長して既設のRF電池設備を活用して、需要家を含む実配電網の一部でマイクログリッドを構築し、同州で問題となりつつある計画停電、輪番停電に対して、その運用を検証する追加実証を決定しました。計画するマイクログリッド運用*
では、容量8MWhの既設のRF電池が接続されている配電網の一部を商用系統から切り離し、RF電池を自立電源としたマイクログリッドを形成することによって、約70軒の実需要家に電力を供給し、その技術的課題を検証します。また、平常時はCAISOとの電力取引で収益を得ながら、災害時にはマイクログリッドの自立電源として停電地区の需要家への電力供給を行うことで、蓄電池の価値を向上させることを目的としています。なお、このようなデュアルユースは世界初の試みであり、世界に先駆けた大型蓄電池活用の実績作りとともに普及拡大を目指します。2.今後の予定
森林火災の多発が予測される秋までにシステムを構築し、12月までマイクログリッド実証を行います。同技術は、米国内での応用のみならず、無電化地域の太陽光や風力発電施設を併設したマイクログリッド、発電機燃料の輸送コストが高い離島での再生可能エネルギーによる100%電力供給にも適用することができます。実証事業終了後には実証成果を生かし、RF電池のさらなる普及を通じ、電力システムのレジリエンス向上だけでなく、今後の再生可能エネルギー導入拡大、温室効果ガス排出削減に貢献します。
3.問い合わせ先
NEDO スマートコミュニティ部 TEL:044-520-5274
住友電気工業(株) 広報部 広報グループ
TEL:06-6220-4119(大阪)・03-6406-2701(東京)
以上