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プレスリリース

枚葉式半導体成膜装置向け高精度温度分布制御システムを開発

製品・技術情報

2021年2月24日
住友電気工業株式会社

住友電気工業株式会社(本社:大阪市中央区、社長:井上 治 以下、当社)は、2021年1月に、半導体製造プロセスの前工程(シリコンウェハー上への回路形成工程)における高精度温度分布制御システムSumiTune®(スミチューン)を開発しました。本システムは、ヒーターおよび電力制御コントローラーから構成されます。本システムの開発により、枚葉式半導体成膜装置で課題となっていたウェハー成膜工程における面内の温度分布の高均熱化が可能となり、枚葉式半導体成膜装置の特色である成膜の高速処理と、成膜の高品質化の両立を実現しました。

半導体は、電化製品から社会インフラまで広く社会で使用されており、近年は次世代規格通信5G、人工知能(AI)による自動運転技術、データセンター用大容量ストレージなどにも使用されています。半導体の高性能化を目指し、回路配線の「微細化技術」や「多層化」の開発競争が世界の大手半導体メーカーを中心に繰り広げられていますが、これらの先端デバイスのニーズに応えるために、ウェハー上に薄膜を形成する成膜工程において、ウェハー面を加熱する様々な温度域のヒーターが必要となっています。

SumiTune
SumiTune®外観

高純度の薄膜を形成する熱CVD*1用途の半導体成膜装置は、大きく分けて25~100枚程度のウェハーを同時処理し、非常に均質な膜厚が得られるバッチ式と、1枚ずつウェハーを高速で処理し、生産性の高い枚葉式の2種類があります。
各半導体デバイスメーカーはバッチ式と枚葉式それぞれの特徴を生かし、各製造工程において使い分けをしていますが、これまで性能面では、温度均一性の観点からバッチ式が優位であったため、高精度を必要とする工程への枚葉式の採用は限定的でした。
ところが、近年の半導体プロセスの複雑化に伴い、高速処理を可能とする枚葉式が注目され始めました。さらに枚葉式装置に対する高品質な成膜の要求が高まり、成膜処理中のウェハー面内の温度分布の均一性向上が重要な課題となっていました。

従来のウェハー加熱用枚葉式ヒーターは、同心円状のゾーンに区分けして制御されていましたが、装置内の様々な環境因子による周方向の微妙な温度分布ムラをカバーすることができず、限界を迎えていました。この限界を乗り越えるために今回開発したのが、高精度温度分布制御システムSumiTune®です。

SumiTune
SumiTune® Heaterのゾーンイメージ

SumiTune®は6ゾーンに分けたヒーター(SumiTune Heater:スミチューンヒーター)とその6ゾーンを効率よく、かつ高精度で電力制御ができるコントローラー(SumiTune Controller:スミチューンコントローラー)から成り、以下の特長を有します。

●SumiTune®の特長

SumiTune
SumiTune®による
成膜分布の改善イメージ
  • (1)様々な温度分布制御が可能
    ウェハー全面の温度分布±0.5℃レベル(500℃時)の均一性を得ることができます。また様々な温度分布を可能にすることで、温度に敏感な各種成膜工程にも1台での対応が可能です。
  • (2)1ワットレベルの各ゾーン電力調整で成膜分布の微調整を実現
    SumiTune®では、従来ヒーターでは得られなかった1ワットレベルでの各ゾーンの電力調整が可能となるため、装置やウェハーの非対称要素からくる不均質な成膜分布の微調整を実現できます。
  • (3)開発期間・開発費用を圧縮
    SumiTune®は様々な環境において対応可能なチューニング性を有しているので開発時間を大幅に短縮でき、ウェハーを使用したトライ&エラーの評価回数を減らし、お客様の開発コストの低減に貢献します。

上記SumiTune®の特長により、チャンバの環境に合わせた高均熱化を実現でき、従来のバッチ式熱処理装置で得られなかった、生産性と成膜膜厚均一性を両立させ、回路配線の微細化や多層化ニーズへの対応が可能になります。
すでに複数の半導体製造装置メーカーおよび半導体デバイスメーカーに、量産品への採用に向け評価を開始頂いています。

当社は、特長ある材料・プロセス技術と熱シミュレーション技術を背景にとして引き続き高付加価値製品の開発に取り組み、次世代の半導体技術に貢献できる最適なソリューションを提案に努めてまいります。

*1 化学的気相成長(CVD: Chemical Vapor Deposition)

■ ご参考

以上

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