プレスリリース
(株)アライドマテリアル 核融合実験炉イーター向け部品を受注
2021年7月20日
住友電気工業株式会社
住友電気工業株式会社(本社:大阪市中央区、社長:井上 治、以下 当社)のグループ会社である株式会社アライドマテリアル(本社:東京都港区、社長:山縣一夫、以下 アライドマテリアル)は、この度、国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構(以下 QST)から、核融合実験炉イーター(以下 ITER)*
で使用する部品を受注いたしました。この部品は、フランスで建設中のITERで使用される重要構成部品 「タングステンモノブロック」* で、受注金額は35億円となります。近年、石油や石炭などの化石燃料から脱却することを目的としたカーボンニュートラル(脱炭素)に向けた活動が活発となっています。その中で、核融合反応を利用した「核融合エネルギー」は、地球温暖化の原因となる二酸化炭素を排出しない、エネルギー問題と環境問題を根本的に解決する恒久的なエネルギーとして注目されています。現在、核融合エネルギーは科学技術的に成立することをITERで実証する段階で、我が国を含む7極(日本、欧州、米国、ロシア、インド、中国、韓国)の国際協力により、進められています。
アライドマテリアルが開発、製造したタングステンモノブロックは、ダイバータ*
とよばれる機器の重要構成部品です。2000度を超える熱負荷に耐久し、ITER設計要求運転サイクル数の3倍以上の期間でも割れない、世界に先駆けた"割れないタングステン"の耐熱衝撃性が高く評価され、今回の受注に至りました。受注に伴い、アライドマテリアルでは酒田製作所(山形県酒田市)に量産ラインを新たに敷設し、2021年9月から稼働を始める予定です。なお、この新ラインではIoTを活用した生産効率化を徹底し、従来比8倍以上の能力増強を実現いたします。
環境に配慮したクリーンエネルギーの安定的な供給が求められる中、核融合発電への期待は高まっております。アライドマテリアルは、SDGs達成に寄与する企業として、ITERで日本が担当するダイバータの外側部品だけではなく、欧州が担当する内側部品でもタングステンモノブロックが採用されることを目指します。また、発電実証を目的とした核融合原型炉研究を進めている日本・欧米を始めとした研究機関等にも材料供給を行い、核融合炉の実用化に貢献してまいります。
アライドマテリアルのタングステンモノブロックについて
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主な特長:優れた耐熱衝撃性
核融合反応は1億度を超えるプラズマの中で起こり、このプラズマを維持する上で不要な不純物を排出・除去する機能を担うダイバータの表面温度は最高で2300度に達するなど、部材には極めて優れた特性が要求され、金属の中で最も融点の高いタングステンが採用されています。そのためアライドマテリアルは、核融合炉に適したタングステン材を開発し、特殊接合法によりタングステンと無酸素銅を接合したタングステンモノブロックを製造いたしました。
このタングステンモノブロックについて、QSTが保有する装置で評価を行ったところ、ITERが要求する設計運転サイクル数の3倍以上の評価期間でも割れが観察されず、優れた耐熱衝撃性を示しました。加えて、開発材料は従来材料と比較して、変形による顕著な表面隆起もなく、優れた熱的安定性も確認できました。この良好な結果をもとに実機同様のスケールでダイバータのプロトタイプを用いた評価を実施し、ITER機構の要求を遥かに超える条件下で全てのタングステンモノブロックに割れはなく、世界に先駆けて"割れないタングステン"として認証を受けました。
QSTによる評価の結果 ITER機構によるプロトタイプ評価の結果 -
受注の経緯、ならびに今後の量産計画
核融合エネルギーに対するアライドマテリアルの取組みは、QSTが保有する核融合実験装置が稼働を開始した1985年に遡ります。アライドマテリアルの原料から特殊加工までの一貫生産で培ってきた粉末冶金技術を駆使し、長きに渡り安定した品質の製品をQSTへ供給することで、信頼関係を構築してまいりました。加えて今回の卓越した性能が評価され、案件受注いたしました。
今後について、アライドマテリアルでは酒田製作所(山形県酒田市)内に新たな建屋を建設し、量産ラインを敷設します。IoTを活用した生産効率化を徹底し、従来比8倍以上の能力増強を実現した上で、2021年9月から稼働を始める予定です。
以上