「DI-BSCCO® Type HT-NX」
- 発売開始 2015年4月
超電導ってなに?
超電導は、電気抵抗がゼロの状態で電気を流す技術です。これを使うには電線の形にする必要があり、当社では「ビスマス系超電導線 DI-BSCCO®」という超電導線(電線)を作っています。超電導線は、普通の電線(銅)に対し、約200分の1の大きさで電気を流すことができます(※1)。電気抵抗がないため、電力損失を低減し安定的に送電ができ、さらに送電の際の発熱量が少ないといった特長もあり、車やバス、新幹線など乗り物のモータなど、さまざまな分野での活用が期待されています。
DI-BSCCO® Type HT-NXの特長は?
当社が開発した超高強度ビスマス系高温超電導線材は、従来の高強度と比較して、引張り強度約50-60%の向上を実現しました。これにより、線材がより大きな電磁力を受けることができ、従来の高強度線材では実現できなかった二十数テスラ(※2)程度の超高磁場領域や大型のマグネットにも、使用可能となりました。
これらの超高磁場領域でのニーズに加えて、既存の銅線ならびに金属系超電導線材と比べて多くの電気量を流すことができ、各種装置類の小型化も可能となります。さらに、同線材の持つ超電導線材としての高い基本性能により、磁場の精度や安定性をより高めることが可能となり、各種装置類の高感度化にも寄与することが期待されます。
また、従来の高強度線材と比べて、許容両曲げ直径の約30%低減を実現したことにより、曲げ径がより小さいコイルなどへの適用拡大が可能となります。
この超電導線は、「高強度Bi-2223線材の開発」として、一般社団法人 未踏科学技術協会より第19回超伝導科学技術賞を受賞しました。
今後さらに、量産体制の整備を目指し、お客さまが使いやすい超電導線材の提供を進めていきます。
線材技術グループ
開発のきっかけはなんですか?
高温超電導線材は大きく二つに分かれています。当社が製造しているビスマス系超電導線材と、金属基板上に薄膜を堆積させて製造する希土類系線材の二種類です。ビスマス系超電導線材は、希土類系線材と比べて、機械強度がとても低い問題がありました。そのため二十数テスラ程度の超高磁場領域や大型のマグネットの応用分野の開発をしているお客さまは、ビスマス系超電導線材では強度不足のため、どうしても強度が高い希土類系線材を念頭に設計をされていました。これらの応用分野でも当社のビスマス系超電導線材を使用していただきたいという思いから、超高強度のビスマス系超電導線材の開発を始めました。
開発する上で難しかったことはなんですか?
超高強度超電導線材は、テープ状の超電導線材の両面に金属箔でサンドイッチした形状をしており、超電導線材と金属箔はハンダ接合させています。今回金属箔に選択したNi合金箔は、耐食性に優れる特長がある一方でハンダ付けをすることがとても難しい材料です。うまくハンダ付けするための表面処理を検討しましたが、なかなかうまくできませんでした。そこで、さまざまな方からアドバイスをいただいたところ、表面処理をする上で、一番の問題はNi合金箔上の酸化膜の除去方法だということがわかり、確実な酸化膜の除去方法(条件)を絞ることができました。その結果、Ni合金箔を使用した超高強度超電導線材の試作を開始できました。