低損失大容量電線とは?
発電所でつくられた電力は、送電線を通じて工場や家庭まで運ばれます。
送電線の中でも、鉄塔などによって電線を架け渡し、超高圧・大容量の電力を送るのが架空送電線です。
送電においては、おもに電線の電気抵抗により送電損失*1が発生します。今日、省エネルギーと低炭素社会実現に向けた取り組みの中で、送電分野においては送電損失を減らし、効率良く安定して送電できる架空送電線のニーズが高まっています。住友電工はそのニーズに応えるため、低損失大容量電線を開発しました。
低損失大容量電線の特長は?
架空送電線では、鋼心の周辺にアルミ線をより合わせた「鋼心アルミより線」が広く使用されています。
当社が開発した低損失大容量電線は、鋼心部分に従来の1.3倍の強度を持つ材料を採用することで鋼心を小径化し、その外側に台形状のアルミ線を隙間なく配置し、アルミ占積率を高めています。
その結果、電線の外径・引張強さを従来電線と同等に維持しつつ電気抵抗を下げることができ、従来型電線と比較し送電損失を20~25%低減することが可能となりました。
送電の効率化により需要地まで必要な電力を少ない送電損失で届けることができるため、発電量が減り発電時に発生するCO2排出の削減にも寄与します。
また、本電線はアルミ部分に耐熱アルミ*2を適用することで、従来型電線の約2倍の電流容量を持っています。緊急時バックアップ分の容量も持ち合わせ、送電網の信頼性向上に貢献します。
どのような場所に採用されていますか?
本製品は、発電所から都市近郊の変電所まで、および変電所間を繋ぐ超高圧送電線路に使用され、都市への電力供給の重要な役割を担います。昨年10月には、スリランカの都市間を結ぶ基幹送電網に本製品が採用されました。
電気は私たちの生活には欠かせない重要なインフラで、今後も世界中のあらゆる場所で送配電網のより一層の強化、効率化のニーズが高まってくると考えられます。当社ではこれまで培ってきた技術力を活かし今後も国内外の電力の安定供給に貢献します。
開発にあたり難しかったことは何ですか?
本製品は、アルミの占有率を高めるために、台形状のアルミを隙間なく並べており、電線表面が平滑となっています。
そのため、風の抵抗を受けやすく、鉄塔の補強が必要になるなどの問題が考えられ、お客さまから風の抵抗を従来と同等以下に抑えるよう求められました。
従来、風の抵抗を小さくする方法としては、電線表面に窪みを設けることが主流でしたが、その場合アルミ量が減るため、送電損失の低減量が小さくなります。
本製品では、小さな段差を付けることでアルミ量を確保し、送電時の低損失と風の抵抗低減の両立を実現できました。