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トップメッセージ 2015年02月号(Vol.449)

社長 松本正義

古典を学ぶ、ということ

さまざまな事象が複雑に絡み合う現代社会においては、「一寸先は闇」であります。ある場所で起こった事件が、まったく別の場所で思わぬ形で影響を及ぼしていることも多いはずです。経営者は、可能な限りの選択肢を考え比較衡量しますが、限られた時間と不完全な前提・情報の中では、「風が吹けば桶屋が儲かる」的な事態まで予想することは不可能であります。「6:4でA案のメリットが大きい」と判断すればA案で決断し、その後は走りながら軌道修正して成功確率を高める努力をする、というのが多くの場合でありましょう。

経営者の決断は会社の業績を左右し、多くのステークホルダーに影響を与えます。しかし、混沌とした世の中にあっては、「正しい決断」を導くのは容易なことではありません。そのようなときに、一つの拠り所となるのはリベラルアーツ(liberal arts 教養)でありましょう。リベラルアーツは、単なる「知識」ではなく、人間が何代にもわたって営々として積み重ねてきた知恵と工夫と反省であり、語り継がれてきた教えであります。そして、いわゆる古典(クラシック classic)と呼ばれるものにその精髄が収められています。

クラシックの語源は、遥かローマの時代に遡るそうです。当時のローマでは、軍艦は、税金ではなく寄付で建造されていました。そこで、危機に際して国を守る「艦隊」(クラシス classis)を寄付できるような富裕層のことをクラシクス(classicus)と呼ぶようになり、さらに転じて、危機に直面した時に「精神の力」を与える書物や作品のことを指すようになりました。それが、現在のクラシック=古典という言葉につながっているそうです※。

組織のリーダーは、さまざまな課題にチャレンジしなければなりません。その多くは、簡単には解決できそうにない難問です。突然降りかかって来る問題もあります。しかし、日頃から古典に親しみ、先人の知恵を血肉としておけば、難局に際しても多くの選択肢を持ち、平常心を保つことができるのではないでしょうか。リベラルアーツを高めておくというのは、そのようなことではないかと考えております。

※猪木武徳「大学の反省」(NTT出版)、今道友信「ダンテ『神曲』講義」(みすず書房)

社長 松本 正義


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