- 製品発売時期 2015年7月
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X帯レーダーって何?
レーダーとは、電波を発し、その反射波から対象物までの距離や方向を計る装置です。レーダーは、周波数によってL帯、C帯、X帯など約11種類に分類され、それぞれ用途が異なっています。
これまで、雨や雪などを観測する気象レーダーではC帯レーダー(4~8GHz)が使用されていましたが、近年、集中豪雨を正確に観測し、洪水や土砂災害などの防災活動などに役立てるため、高解像度の気象レーダーが求められています。そこで、C帯レーダーより周波数が高い8~12GHzに対応したX帯レーダーの開発が進んでいます。従来、X帯レーダーでは、おもに真空管素子が出力信号の増幅に用いられていましたが、近年では窒化ガリウム高電子移動度トランジスタ(GaN HEMT)を採用したレーダーが増えています。
今回開発したGaN HEMTの特長は?
①長寿命化に貢献
当社が今回開発したGaN HEMTは、トランジスタ構造やレイアウトの最適化によりX帯において高出力、高効率を実現しています。従来レーダーの送信機に用いられてきた真空管素子は、寿命による交換のサイクルが2~3年と短く、レーダーの運用コスト増加の一因となっていましたが、GaN HEMTを送信機に採用することにより、素子の交換が不要となります。
②低雑音を実現
真空管素子は信号の雑音が大きく、レーダーの送信電波が他の無線通信システムと干渉しやすいという問題がありましたが、低雑音性に優れているGaN HEMTを採用したことにより、それらの問題が解決しました。
③高出力で広帯域に対応
今回開発した200W GaN HEMTは、8.5~9.8GHzの広帯域を実現しており、周波数の異なるさまざまなレーダーに使用可能です。
これらの特長を活かし、2015年7月より量産を開始した本製品は、複数のレーダーメーカーの機種に採用され、気象レーダー以外にも海上交通の安全のため船舶を監視する港湾監視レーダーや船舶搭載レーダーなどにも使用されています。
電子デバイス事業部 電子デバイス開発部 第二開発課
開発のきっかけは何ですか?
従来、レーダーの素子には真空管がおもに使用されていましたが、お客さまより、長寿命である半導体の使用が求められていました。
当社は2013年にGaN HEMTを採用した100W級出力の製品を発売し、国内外のお客さまから採用いただいておりましたが、アンプの小型化や部品点数の削減のため、さらなる高出力素子の要望がありました。
そこで、100W級製品に使用していた24V動作のGaN HEMTを、50V動作のGaN HEMTを用いて高出力化を実現しようと考え、開発に着手しました。
お客さまからどのような反応をもらっていますか?
1kW、2kWといったアンプを構成するには、複数のHEMTデバイスの出力電力を合成する必要があります。従来の100W級出力製品にくらべ、今回の200W出力製品では、同じ出力を得るための電力合成の数が半減するため、装置の小型化、軽量化が図れると国内外のお客さまから好評いただいています。