ECFストランドって何?
ECFストランド(Epoxy Coated and Filled Strandの略)とは、内部充てん型エポキシ樹脂被覆PC*鋼より線の呼称でエポキシ樹脂を防食被覆として用いたPC鋼材のことです。
近年、鉄筋やPC鋼材の腐食により、コンクリート構造物の耐久性が損なわれるケースがあり、防食性の高いPC鋼材が要求されています。
そこで住友電工スチールワイヤー(株)では、樹脂メーカーと共同で開発した強度および伸び特性に優れた特殊なエポキシ樹脂をPC鋼より線の表面に被覆し、各素線間の隙間部に充てんすることで、優れた防食性・耐久性を有するECFストランドを開発しました。1990年代より橋梁、斜面安定アンカー、風力発電施設など、社会インフラを支える幅広い分野にECFストランドが採用されています。ECFストランドには、コンクリートとの付着が確保できる付着型や表面が平滑な標準型のほか、ポリエチレンを被覆した重防食のPE被覆型があり、用途に応じて使い分けられています。
通常のコンクリートとPC鋼材を使用したコンクリートの比較
新開発したECFストランドの特長は?
土木学会の設計施工指針(案)に規定された標準サイズ(12.7mm、15.2mm)のECFストランドは、複数本束ねることで主に橋梁の橋軸方向ケーブルなどに適用されてきました。今回、太径や細径などのラインナップを拡充することで、橋梁のさまざまな部位にECFストランドが使用できるようになりました。
①高強度ECFストランド(15.7mm)
現行のJIS規格の強度レベルを超える高強度ストランドを開発し、1本あたりの高張力を実現しています。今まで省力化や省資源などの目的で橋軸方向のケーブルに使用されてきました。
今般、1本用の緊張定着システムを開発し、床版や橋桁同士を一体化する横締めにも適用できるようになりました。
②太径高強度ECFストランド(17.8mm、21.8mm)
高強度ストランドの技術を活用し、径を太くすることで、さらなる1本あたりの高張力を実現しています。床版や橋桁の横締めなど、要求される張力が高い部位でも複数本束ねずに1本で適用できます。ECFストランドのエポキシ被覆により、橋桁の継ぎ目部においてもPC部材の耐久性が向上します。
③細径ECFストランド(9.3mm)
薄肉のコンクリート部材に適用されます。数多く配置することで応力が分散し、ひび割れを防ぎます。
PC技術部
開発する上で難しかったことは何ですか?
エポキシ被覆厚の均一化に苦労しました。インラインで全長のエポキシ被覆厚を計測していますが、太径のECFストランドでは、従来線径の製品に比べエポキシ樹脂量が多くなるため、被覆厚の制御に高度な技術が必要となります。そこで、エポキシ被覆位置を調整可能な設備を設計・導入し、被覆後の製造条件を線径に合わせて最適化しました。その結果、従来品と同等レベルの均一性を全長にわたり達成できています。
どのような場所で役立っていますか?
耐久性を求められる地域で特に好評をいただいています。例えば東北地方では塩害や凍害に強く、耐久性に優れた部材が要求されていました。東北復興道路の新設橋梁にもECFストランドが採用され、コンクリート構造物の高耐久化、長寿命化に貢献しています。